■会議報告■
2004年3月21日から25日に開催されたIJCNLP04(International Joint
Conference of Natural Language
Processing)に参加しました。この会議は、すでにご案内のとおり、言語処理学会も運営に協力している、アジア言語処理学会連合(AFNLP:
Asian Federation of Natural Language
Processing)主催の第一回のフラグシップ国際会議です。本会議に合わせて、AFNLPの会議も開催され、そこにも言語処理学会の代表として参加してきました。
今回の会議は中国の南に位置する海南島の三亜市にあるリゾートホテルで行われました。日本は薄ら寒い日が続いていましたが、会場のホテルの前の美しい海では、泳ぐこともできるほど暖かでした。この一角は近代的なホテルの建ち並ぶ亜熱帯のリゾート地で、中国にもこのような場所があるのか、というのが感想でした。
IJCNLP−04
IJCNLP04本会議には中国本土から約50名、それ以外から200名の参加を得て盛況でした。全体で211本の論文が投稿されており、内訳はアジアが80%、ヨーロッパ、およびアメリカがそれぞれ10%だったそうです。口頭発表の採択率は
31%と厳しく、質の高い論文が集められており、会場では熱心な議論が行われていました。内容は機械翻訳、要約など、言語処理のほぼ全分野をカバーしており、中国語、韓国語、日本語を対象にした研究が目立ちました。
残念ながらその他のアジア言語の処理についてはあまり発表がありませんでしたが、パネル討論の一つで、いわゆる話者の少ないアジア言語の情報処理に関する議論が行われました。ここではインドネシア語、マレー語、モンゴル語、チベット語、ウイグル語の研究者がそれぞれの言語の言語処理の現状を報告しました。日本語などにくらべれば、もちろんリソースやツールは少ないのですが、計算機への入力システムなどは作られているようで、今後いろいろな応用システムが期待されます。漢字入力に始まり形態素解析などの経験を積んできた我々の知識が大いに役立つものと思われます。学会としてもこれらの国々にいろいろ貢献ができるのではないでしょうか。
もう一つのパネル討論では北京オリンピック(2008年)で、中国が計画している、言語処理技術を駆使した情報サービスシステムの計画が紹介されました。多言語翻訳、音声認識、音声合成技術を駆使し、中国の旅行案内、スポーツ対戦成績紹介などを、いつでも、どこでも、だれにでも提供するのがねらいです。かなり野心的な計画で、パネリストや会場からは、対象や目標を絞るべきだとの意見が出ていましたが、どのようなシステムができるのか楽しみです。
なお、会議には、日本の言語処理学会など、アジア諸国の国内学会(韓国、台湾、中国)、国際学会のACLなどから寄付が寄せられるなど、国際的な協力という点でもうまく運営されていました。余剰金は、次回の会議開催に使われる予定になっています。
AFNLP国際会議計画委員会
AFNLPは、これまで国際会議計画委員会(Conference Coordination
Committee)という委員会が中心になって、会の正式発足に向けた準備を行ってきました。今回の会合で、会則が承認され、また、会長が選出されることで、正式な活動母体が発足しました。初代の会長には香港城市大学(City
University of Hong Kong)のBenjamin K.
Tsou教授、副会長には東京大学の辻井潤一教授が選出されました。任期は2年で、基本的に副会長が次の会長に就任します。資金的な裏付けをどうするか、など今後の課題はありますが、学会としてもできるだけ
AFNLPに協力して、アジアの言語処理研究をさらに活性化させたいものです。
また、次のフラグシップ国際会議、IJCNLP
05を韓国済州島で2005年10月頃に開催することも決められました。次回もぜひ多くの方に投稿、参加していただけますようお願い致します。皆様の協力で、今回と同様、次回も活発で質の高い国際会議にしたいと考えております。
(渉外担当理事 田中英輝)
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