言語処理学会ニュースレター

Vol. 14 No. 2 (2007年8月30日発行)

目次

□言語処理学会第13回年次大会報告

第13回年次大会実行委員長
馬 青(龍谷大学)

  • 場所期日

    言語処理学会第13回年次大会は龍谷大学瀬田学舎3号館と4号館において下記の日程で開催された。

    チュートリアル 2007年3月19日
    本会議 2007年3月20日、21日、22日
    ワークショップ 2007年3月23日
  • 内容
    • チュートリアル
      • トラック1:「計算機の言語資源」
        • 「非線形言語モデルに基づく意味的等価変換方式の実現に向けて
          -日本語重文複文に対する意味類型パターン辞書の研究開発-」
          池原 悟
        • 「言語処理基盤としての言語資源
          -タグ付きコーパス、生コーパス、そして新聞記事からウェブへ-」
          河原 大輔
        • 「コミュニケーション研究のための多言語話し言葉コーパス構築」
          竹澤 寿幸
      • トラック2:「文法と意味論」
        • 「自然言語処理における文法開発の軌跡と展望」
          二宮 崇,宮尾 祐介
        • 「文法理論に基づく言語処理技術の現状とその応用
          -Parallel Grammar Projectの活動を中心に-」
          増市 博,梅基 宏,大熊 智子
        • 「日本語の数量詞の意味論」
          郡司 隆男
    • 本大会
      発表件数 298件(実績。発表取り消しを除く。)
      口頭発表(テーマセッション除く) 157
      ポスター発表 113
      テーマセッション1(教育を支援する言語学・言語処理) 15
      テーマセッション2(「語の意味」と言語学・言語処理) 13
    • 招待講演
      • 「発話が伝える意味 -発話意図を理解する脳機構とその発達-」
        今泉 敏
      • 「人間の言語処理における選択的遅延処理仮説の妥当性について
        -「ガ格連続文」の処理過程を中心に-」
        坂本 勉
    • 特別講演
      「大量情報からの価値創出」
      喜連川 優
  • 参加状況
    事前申込 当日申込 合計
    本大会参加者 456 132 588
    チュートリアル 175 24 199
    ワークショップ 215 41 256
  • 総括

    関西圏での開催なのだが、本大会参加者の事前申込者は同じく地方開催の一昨年よりも10名少なかった。幸い、当日の飛び入り参加者が多かったことに加え、チュートリアルとワークショップが盛況なため、延べ参加者数は1000人を超えた。特筆すべきは懇親会の参加者が96名にも上り、例年を大きく上回った。反省点も多数あった。1つは天気がたいへん冷え込んでいたが会場の暖房供給が不十分だったことである。もう1つは協賛企業様の説明会後にバスの特別運行が行わないことを事前に周知できなかったことで多数の参加者にご迷惑をおかけしたことである。また、広めのポスター会場を用意できなかったこともご不便をおかけしたと思われる。この場でお詫びする次第である。




□言語処理学会第13回年次大会プログラム委員会からの報告

第13回年次大会プログラム委員長
中岩浩巳(NTT)

 今回で13回目となる年次大会は、前回の12回大会が首都圏で行われたこ ともあり、地方開催となりました。本大会が自然言語処理研究における国内最 大の会議として定着したことからか、本会議で298件と、昨年、一昨年同様、 多数の論文発表がありました。また、参加者も、過去最高であった昨年度まで は達しませんでしたが、同じく地方開催であった第11回より多くの方に参加し ていただき(本大会588名)、地方開催にともなう参加者減も傾向もなくなっ てきたように思います。

 このような近年の大会の大規模化にともない、今まで通りでのプログラム委 員会の運営では困難となってきたことから、前任のプログラム委員会では様々 な工夫がなされ、大会を成功に導いてくださいました。今回も前回の様々な試 みを実施しつつ、新たな試みも導入しました。

  1. チュートリアル  前回好評であったチュートリアルの2トラック化を今回も導入し、様々な興 味を持った方が参加しやすいようにしました。その結果、約200名の方に参加 いただきました。
  2. プログラム冊子  前回同様、論文集のCD-ROM化と、製本コストの低減、また、広告掲載、企業 協賛をお願いすることによる印刷費の補填を行った結果、健全な単独収支を実 現しました。
  3. テーマセッション  「教育を支援する言語学・言語処理」、「「語の意味」と言語学・言語処理」 の2種類のテーマセッションを企画し、論文募集いたしました。両方とも1セッ ションでは収まりきれないほど多数の論文発表がありました。
  4. 招待講演、特別講演  招待講演は、今泉敏(県立広島大学)、坂本勉(九州大学)両先生にお願い しました。また、年次大会参加者層にとって有益な時代的なホットトピックに ついてご講演いただく特別講演を,招待講演とは別に企画し、喜連川優 (東京 大学)先生にご講演いただきました。
  5. ワークショップ  本大会の翌日に、「言語的オントロジーの構築・連携・利用」「大規模Web 研究基盤上での自然言語処理・情報検索研究」2件のワークショップを開催し、 両方とも100名以上の参加者があり、大変盛況でした。

 今回は、実行委員長の馬青先生のご尽力により、無償で会場を使わせていた だくなど龍谷大学様の全面的なご支援いただいた結果、健全な収支を実現しつ つ、大会を成功させることが出来ました。また、プログラム委員の皆様には、 盛況な大会を円滑に運営するための様々な準備を献身的にかつ適切に行ってい ただきました。大会当日お手伝いいただいた龍谷大学のスタッフを含め、本大 会を支えてくださった全ての皆様に対し感謝の意を表します。




□言語処理学会第13回年次大会優秀発表賞選考について

第13回年次大会プログラム委員長
中岩浩巳 (NTT)

 言語処理学会年次大会優秀発表賞は、年次大会において、論文の内容および プレゼンテーションに優れたものと認められた発表論文に与えられる賞です。 また、優秀発表賞のうち特に優れたものがあれば、最優秀発表賞として選定す ることが第11回からとりいれられました。

 第12回大会において、優秀発表賞規定が改訂され、発表件数に応じて、優 秀発表賞の件数も増減することとなりましたが、今大会でもこの規定に基づい て優秀発表賞の選定を進めました。今回の年次大会では298件の発表がありま したので、授賞件数は5~6件を目処としました。

 60名の選考委員の皆様に優れた発表を推薦していただいた結果、59件が選考 対象となりました。次に、選考委員会において、これらに対する投票を行った 結果、得票数が特に多かった上位2件を最優秀発表賞、それに続く4件を優秀発 表賞として推薦することとしました。授賞件数は総発表件数の2%以内というこ とになっておりましたので、今回の選考結果の6件(2.01%)は適切な件数と思わ れます。上記の6件の中には、発表申込時の大分類(ABCT)のうちA分類を含んで いませんが、分野のバランスを考慮した上で下した結論であり、許容範囲内と 思われます。

 6月15日に開催された理事会におきまして、これらを推薦・諮問し、承認 を得ました。以下が、第13回年次大会において優秀発表賞に選ばれた論文で す。

  • 最優秀発表賞(2件)
    • C5-1 大規模日本語ウェブ文書を対象とした開放型検索エンジン基盤の構築
      新里圭司 (京大), 柴田知秀 (東大), 河原大輔 (NICT), 黒橋禎夫 (京大)
    • D1-1 データの分布特性を利用した半教師有り系列構造学習:言語解析への適用
      鈴木潤, 藤野昭典, 磯崎秀樹 (NTT)
  • 優秀発表賞(4件)
    • B2-1 漢輔:外国人のための漢字検索システム
      田中久美子, Julian Godon (東大)
    • D3-7 コールセンターにおける会話マイニング
      那須川哲哉, 宅間大介, 竹内広宜, 荻野紫穂 (日本IBM)
    • S1-1 教育用語彙選定における特徴語抽出及びWordplotの利用
      中條清美 (日本大), 内山将夫 (NICT), 中村隆宏 (小学館), 西垣知佳子 (千葉大)
    • PL1-2 日本語書き言葉を対象とした述語項構造と共参照関係のアノテーション:NAISTテキストコーパス開発の経験から
      飯田龍, 小町守, 乾健太郎, 松本裕治 (NAIST)



□言語処理学会第13回通常総会報告

日時: 2007年3月21日(水) 13:00~14:00
場所: 龍谷大学 瀬田学舎 4号館 209教室
出席者: 94名,有効委任状 189名 (内 議長への委任 187名)

 総会に先立ち、石崎会長からの挨拶があり、2006年度論文賞1件ならびに第 12回年次大会最優秀発表賞2件、優秀発表賞4件の受賞式が行なわれました。

 続いて、出席者数が定足数(正会員数720名の10分の1)を満たすことを確認し、 第13回通常総会が開催されました。石崎会長が議長として選出され、以下の議 題の審議が行なわれました。

  • 2006年度 事業報告
     石崎会長より2006年度の事業報告がありました。
  • 2006年度 決算報告
     斎藤財務担当理事より、2006年度の決算報告、引続き飯田監事よりその監査報告があり、いずれの内容も承認されました。
  • 2007年度 事業計画
     石崎会長より、2007年度の事業計画の説明があり、その内容が承認されました。
  • 2007年度 予算案
     斎藤財務担当理事より、2007年度予算案について説明があり、その内容が承認されました。
  • その他

     予算の繰り越し金の使途について、年次大会論文集の作成に充てるのはいかがか、という提案がありました。

     これについて、石崎会長より、年次大会は独立採算であるために大会各種委員会で運用を考えて頂きたいが、例年、収支が黒字になっているので、次回の大会においてはその点を考慮して予算案を策定して頂きたいという回答がありました。

(総務担当理事 森辰則)




□2006年度論文賞について(既報)

2007年3月21日、通常総会に先立って、2006年度論文賞の表彰式が 行われました。受賞論文は、以下です。

著者:平川秀樹(東芝)
題名:選好依存文法とその圧縮共有データ構造「依存森」について
掲載:自然言語処理13巻3号

選考過程(編集委員会報告から):
 論文賞は、採録論文30件程度につき1件を目途に授与することになってい ます(平成18年1月の編集委員会で提案し、理事会で承認)。これに基づき、 2006年に出版された自然言語処理13巻1号から4号に掲載された論文2 4件から1件を推薦することを目標として、以下の手続きで候補論文の選考を 行いました。

  1. 第1次選考として、期間中の各号に掲載された論文のうち、査読点数が5 点満点で4点以上の論文15件を対象に、1論文あたり2名の編集委員が 読み、10点満点で採点しました。
  2. その結果、高得点を得た7件の論文を第2次候補論文とし、編集委員全員 が4点満点で採点しました。
  3. その最上位の論文1件を、編集委員会として論文賞候補に推薦することに 決しました。
  4. 編集委員会から上記の過程を経て推薦され、理事会で承認された上記論文 について、評議会で2006年度論文賞を授与することが了承されました。



□その他(第14回年次大会について)

 言語処理学会第14回年次大会は、下記の予定で開催されます。

日程:
チュートリアル 2008年3月17日(月)
本会議 2008年3月18日(火)~20日(木)
ワークショップ 2008年3月21日(金)

場所:東京大学駒場キャンパス

大会委員長: 加藤恒昭(東大)
プログラム委員長: 田中英輝(NHK)




  • 学会に関する問い合わせ先
  • 中西印刷株式会社 東京事務所内 言語処理学会事務局
    Tel. 03-3816-0738
    Fax. 03-3816-0766
    〒113-0023 東京都文京区向丘1-1-17
    e-mail nlp@nacos.com

  • ニュースレター担当(田村直良)
  • 横浜国立大学大学院環境情報研究院
    Tel. 045-339-4161
    Fax. 045-339-5228
    〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-7
    e-mail tam@ynu.ac.jp