言語処理学会ニュースレター
Vol. 16 No. 2 (2009年8月8日発行)
目次
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言語処理学会第15回年次大会報告
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第15回年次大会 プログラム委員会からの報告
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言語処理学会第15回通常総会報告
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第15回年次大会 優秀発表賞の選考について
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第15回年次大会 若手奨励賞の選考について
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2008年度論文賞について(既報)
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第16回年次大会について
□言語処理学会第15回年次大会報告
第15回年次大会実行委員長
村上仁一(鳥取大学)
- 場所期日
言語処理学会第15回年次大会は,鳥取大学鳥取キャンパスにおいて,下記の日程で開催された.
チュートリアル | 2009年3月2日(月) |
本会議 | 2009年3月3日(火)〜5日(木) |
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- 内容
次のプログラム委員長からの報告の通り.
- 参加状況
| 事前申し込み | 当日申し込み | 合計 |
本会議 | 433 | 68 | 501 |
チュートリアル | 191 | 25 | 216 |
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- 総括
第11回大会以降,多少の変動はあるものの本会議の参加者数は増加を続けていた.しかし,今年度,参加者は3割減少した.特に当日参加者は6割減少した(東京大学第14回年次大会は,本会議参加者735名.内訳は事前申し込み559,当日申し込み176).また,チュートリアルは1トラックのみ開催し,ワークショップは開催しなかった.地方開催であったこともあるが,リーマン・ショックの影響があったのであろう.しかし,個々の発表は盛況であった.特にポスター発表と懇親会は非常に盛況であった.
会計面では,財団法人とっとりコンベンションビューローより,多額の助成金を頂いた.そのため,事前登録における参加料や懇親会費を,前年度の大会より低額にして,かつ参加者が減少したにも関わらず,赤字決算にはならなかった.具体的な報告は,後日行う予定である.なお,言語処理学会の黒字収支を会員に還元するため,来年以降も,大会参加費,特に事前申し込みの場合の参加費の減額が行われる予定である.
年次大会の開催の大きな問題点として,会場の確保がある.講演会場は,収容人数が最大の部屋を4つ確保した.しかし,部屋によっては立って聴講する人がいた.ポスター発表会場は,ポスター発表が可能な最大の部屋を確保したが,それでも混雑が激しかった.総会会場および招待講演の会場も,鳥取大学で最大の部屋を確保したが,おおくの席が埋まった.地方大学では,限界に近い参加人数と思われる.
今回,始めて企業展示をおこなった.参加された企業の方に聞いたところ,どのような人がどのように自社の製品を利用しているのか直接聞けて良かったとのことである.また,前回から賛助会員となって下さっている組織の方を対象に非会員の参加費を会員価格に割り引きするという施策を実施している.これらの制度は,かなり好評だったようだ.これらを機会に言語処理に興味を持って下さる方が増えれば幸いである.
当日の運営では,会場の暖房の設定とマイク調整に手違いがあり,参加者にご迷惑をおかけしたことをお詫びしたい.また,鳥取駅から鳥取大学までのアクセスなど,行き届かなかった点も多かったと思うが,ご容赦をお願いする次第である.
□第15回年次大会 プログラム委員会からの報告
第15回年次大会プログラム委員長
黒橋禎夫(京大)
第15回大会は235件の口頭・ポスター発表がありました.開催日が2週間早まったことと経済状況の影響などから前回大会に比べますと発表数は減少しましたが,例年どおり活気のある大会となりました.ご参加いただいた皆様,また直接大会の運営・企画にご尽力いただいた実行委員会,鳥取大学の関係者の皆様,プログラム委員会の皆様に厚くお礼を申し上げます.今回より,運営のスムーズな引き継ぎのために,プログラム委員の役割分担を2名1組とし,1名は次回大会も委員を継続する体制といたしました.また,本分野のさらなる活性化を目指し新たに若手奨励賞を設置しました.大会内容は下記のとおりです.なお,ワークショップは例年通りにテーマ募集を行いましたが,応募がなかったため開催致しませんでした.
- チュートリアル(3月2日 参加者220名)
- 「ウェブサービスを利用した自然言語処理研究」
山下達雄(Yahoo! JAPAN 研究所)
- 「生成文法の考え方と検証の方法」
上山あゆみ(九州大学)
- 「情報可視化の基礎」
松下光範(関西大学)
- 「自然言語処理のための知識獲得」
関根聡(ニューヨーク大学)
- 本大会発表件数内訳(取り消しを除く実績)(3月3日〜3月5日)
口頭発表(テーマセッションを除く) | 126件 |
ポスター | 95件 |
テーマセッション | |
実社会に求められる自然言語処理 | 7件 |
統語論と意味論のインタラクション | 4件 |
文学・文化の言語研究および言語処理研究 | 3件 |
合計 | 235件 |
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- 招待講演(3月4日)
- 「意識と言語と情報」
西垣通(東京大学大学院情報学環)
- 「日本における『裁判と言語』」
川嶋四郎(同志社大学法学部・大学院法学研究科)
□言語処理学会第15回通常総会報告
総務担当理事 森辰則
日時: 2009年3月4日(水) 13:00〜14:00
場所: 鳥取大学 鳥取キャンパス 共通教育棟A20室
出席者: 86名,有効委任状 207名 (内 議長への委任 199名)
総会に先立ち,池原会長からの挨拶があり,2008年度論文賞1件ならびに第14回年次大会最優秀発表賞1件,優秀発表賞4件の受賞式が行なわれました.
続いて,出席者数が定足数(正会員数788名の10分の1)を満たすことを確認し,第15回通常総会が開催されました.橋田副会長が議長として選出され,以下の議題の審議が行なわれました.
- 2008年度 事業報告
橋田副会長より2008年度の事業報告がありました.
- 2008年度 決算報告
斎藤財務担当理事より,2008年度の決算報告,引続き仁科監事よりその監査報告があり,いずれの内容も承認されました.
- 2009年度 事業計画
橋田副会長より,2009年度の事業計画の説明があり,その内容が承認されました.
- 2009年度 予算案
斎藤財務担当理事より,2009年度予算案について説明があり,その内容が承認されました.
- その他
- 学会誌の査読方式の変更
査読者を2名とする学会誌の査読方式の変更について説明があり,その内容が承認されました.
- 学会誌論文の定義
論文の定義について,「社会的な意義を有する論文」を追加すること,ならびに,投稿論文の審査において学術的な価値だけでなく社会的な価値も評価することが説明され,その内容が承認されました.
- 理事会,編集委員会における旅費などの支出
対応する委員会等の長が必要性を認める場合について,その長の承認の下で委員等に旅費等の実費を支出することが説明され,その内容が承認されました.
以上が理事会が用意した議題でした.
これ以外に,会員の皆様より,以下のご意見,ご提案等がございました.
- 大会論文の流通
学会関連の論文,特に,大会論文について,その電子的な流通を促進をすべきではないかというご意見がありました.これに対して,橋田副会長より,今後,コーパスとしての利用も含めて検討するという回答がありました.
- 剰余金の使用
剰余金をWebサイトのドメインの運用等にお金を使うのはいかがかというご提案がありました.これに対して,橋田副会長より,ドメイン名はNLP若手の会が取得しているので,これを有効利用することを今後検討するという回答がありました.
□第15回年次大会 優秀発表賞の選考について
第15回年次大会プログラム委員長
黒橋禎夫(京大)
言語処理学会年次大会優秀発表賞は,年次大会において,論文の内容およびプレゼンテーションに優れたものと認められた発表論文に与えられる賞です.また,優秀発表賞のうち特に優れたものがあれば,最優秀発表賞として選定することが第11回からとりいれられました.
第12回大会において,優秀発表賞規定が改訂され,発表件数に応じて,優秀発表賞の件数も増減することとなりましたが,今大会でもこの規定に基づいて優秀発表賞の選定を進めました.今回の年次大会では235件の発表がありましたので,授賞件数は4〜5件を目安としました.
58名の選考委員の皆様に優れた発表を推薦していただいた結果,55件が選考対象となりました.次に,選考委員会において,これらに対する投票を行った結果,得票数が多かった上位5件を優秀発表賞として推薦することとしました.さらに,この中の上位2件は,3位以下との得票数差が大きく,また推薦者一人当たりの平均点を算出すると1位と2位が逆転するため,2件を最優秀発表賞として推薦することとしました.
6月30日に開催された理事会におきまして,これらを推薦・諮問し,承認を得ました.以下が,第15回年次大会において優秀発表賞に選ばれた論文です.
第15回言語処理学会年次大会 優秀発表賞
- 最優秀発表賞(2件)
- P2-16 ウェブを用いた幼児言語発達研究:大規模縦断データ収集の試み
○小林哲生,永田昌明 (NTT)
- D4-5 グラフカーネルに基づく非分かち書き文からの意味的語彙カテゴリの抽出
○萩原正人,小川泰弘,外山勝彦 (名大)
- 優秀発表賞(3件)
- B1-7 施設配置問題による文書要約のモデル化
○高村大也,奥村学 (東工大)
- B3-8 ロジスティク回帰モデルを用いたラベル付文書クラスタリング
○岡野原大輔 (東大),辻井潤一 (東大/Manchester大/NaCTeM)
- A3-2 自動意味役割付与のための役割集合の設計
○松林優一郎 (東大),辻井潤一 (東大/Manchester大/NaCTeM)
□第15回年次大会 若手奨励賞の選考について
第15回年次大会プログラム委員長
黒橋禎夫(京大)
今回より,自然言語処理分野における優秀な若手研究者の育成を目的として,新たに「若手奨励賞」を設けることになりました.
以下の条件を全て満たす優秀な年次大会発表者が対象となります.
- (発表年度の3月31日において)満30歳未満のもの
- 発表者として登録かつ発表を行ったもの
- 過去に優秀発表賞を受賞していないこと
- 過去に「若手奨励賞」を受賞していないこと
- 発表時に言語処理学会会員であること
今回は,優秀発表賞の選考と同時に選考を行いました.選考対象者の得点を比較したところ,上位3位と4位との間に評価の差があったため,上位3名を若手奨励賞の候補としました.なお,選考委員の投票結果の上位に,非会員の方の発表が数件あり,これらの方は受賞対象外となりました.
優秀発表賞と同様,理事会におきまして,これらを推薦・諮問し,承認を得ました.以下が,第15回年次大会において若手奨励賞に選ばれた方です.
第15回言語処理学会年次大会 若手奨励賞 受賞者
- D5-1 柿元芳文(長岡技科大) 日報を対象とした障害予知
- D5-5 平野徹 (NTT) 関係名詞らしさを用いた固有表現間の関係同定
- A5-6 小澤俊介(名大) 言語資源の検索における用途情報の利用
□2008年度論文賞について(既報)
中岩浩巳(NTT)
2009年3月4日,通常総会に先立って2008年度の論文賞の表彰式が行われました.受賞論文は下記です.
著者: 橋本力(山形大学)・黒橋禎夫(京都大学)
題名: 基本語ドメイン辞書の構築と未知語ドメイン推定を用いたブログ自動分類法への応用
掲載: 自然言語処理 15巻5号
選考過程(編集委員会報告から):
論文賞は,採録論文30件程度につき1件を目途に授与することになっています(平成18年1月の編集委員会で提案し,理事会で承認).これに基づき,2008年に出版された自然言語処理15巻1号から5号に掲載された論文26件から1件を推薦することを目標として,以下の手続きで候補論文の選考を行いました.
- 第1次選考として,期間中の各号に掲載された論文のうち,査読点数が5点満点で4点以上の論文14件を対象に,1論文あたり 2名の編集委員が読み,10点満点で採点しました.
- その結果,高得点を得た上位3件の論文を第2次候補論文とし,編集委員全員が4点満点で採点しました.
- その最上位の論文2件について審議し,表記論文を論文賞候補に推薦することに決しました.
- 編集委員会から上記の過程を経て推薦され,理事会で承認された上記論文について,評議会で2008年度論文賞を授与することが了承されました.
□第16回年次大会について
言語処理学会第16回年次大会は,情報処理学会創立50周年記念全国大会と共催で,以下の要領で開催されます.
日時:2010年3月9日(火)〜3月11日(木)
場所:東京大学 本郷キャンパス (東京都文京区本郷7−3−1)
大会委員長: 村上仁一 (鳥取大)
実行委員長: 宮尾祐介 (東大)
プログラム委員長: 鳥澤健太郎 (情報通信研究機構)
招待講演等各種イベントを情報処理学会全国大会と共同で計画しておりますほか,いずれの大会のセッションも無料で聴講可とする予定です.言語処理学会の活動を他分野の方々にアピールする良いチャンスであると考えており,奮ってのご参加をお待ちしております.また,詳細は追ってご連絡さし上げますが,例年通り,チュートリアル,ワークショップも開催の予定です.
- 学会に関する問い合わせ先
中西印刷株式会社 東京事務所内 言語処理学会事務局
Tel. 03-3816-0738
Fax. 03-3816-0766
〒113-0033 東京都文京区本郷5-29-12-906
e-mail nlp@nacos.com
- ニュースレター担当(馬青)
龍谷大学理工学部
Tel. 077-543-7505
Fax. 077-543-7524
〒520-2194 滋賀県大津市瀬田大江町横谷1-5
e-mail qma@math.ryukoku.ac.jp
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