言語処理学会ニュースレター
Vol. 17 No. 2 (2010年9月1日発行)
目次
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言語処理学会第16回年次大会報告
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第16回年次大会 プログラム委員会からの報告
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言語処理学会第16回通常総会報告
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第16回年次大会 優秀発表賞の選考について
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第16回年次大会 若手奨励賞の選考について
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2009年度論文賞について(既報)
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第17回年次大会について
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NLP若手の会 第5回シンポジウムについて
□言語処理学会第16回年次大会報告
第16回年次大会実行委員長
宮尾祐介(国立情報学研究所)
場所,期日
言語処理学会第16回年次大会は,東京大学本郷キャンパスにおいて,下記の日程で開催されました.
- チュートリアル 2010年3月8日(月)
- 本会議 2010年3月9日(火)〜11日(木)
内容
次のプログラム委員長からの報告を参照ください.
参加状況
今大会は情報処理学会全国大会と共催で,各大会個別の参加者数の統計は取っ
ておりません.詳しくは総括を参照ください.
総括
今大会は情報処理学会全国大会と共催とし,両大会にシームレスに参加できる
よう,参加登録,当日受付,発表論文集などを共通化,聴講のみの場合は参加
費を無料としました.これまでの年次大会と大きく異なることが多々あり,参
加者の方々にはご不便をおかけしたことと思いますが,多くの方々のご協力に
より無事に年次大会を開催することができたことに深く感謝いたします.
参加登録が両大会共通のため各大会個別の参加者数の統計はありませんが,発
表論文集やチュートリアル資料集の申込状況,また発表会場の盛況ぶりから,
言語処理学会は例年通り,もしくはそれ以上の参加者があったと思われます.
発表数は277件(第14回大会より6%減,第15回大会より18%増)でほぼ例年の水
準でしたが,チュートリアルの聴講者数は360名程度,本大会のセッションも
常時300名〜400名程度の聴講者がありました.情報処理学会からの参加者も多
数あったようで,発表会場においては言語処理分野以外の研究者からの質問が
たびたび見られました.また,情報処理学会と言語処理学会両大会の参加者数
は,これまでのそれぞれの大会の参加者数の合計を大きく上回るものとなりま
した.会計面では,参加費無料のため当初より赤字が予想されましたが,ほぼ
想定どおりの赤字決算となりました.後日,具体的な報告を行う予定です.
近年の年次大会では,会場(特にポスター会場)の確保が大きな懸案となって
います.今回は口頭発表ではかなり大きな部屋が確保できたので大きな混雑は
見られませんでしたが,チュートリアルやポスター発表は例年にも増した混雑
となりました.数百人が一堂に会することができる会場を大学で確保するのは
難しいため,今後はプログラムの構成などを工夫する必要があると思われます.
参加登録や当日受付,会場の配置など,例年と勝手が違うことが多々あり,ま
た実行委員会の混乱・不手際も重なり,多くの方々にご不便,ご迷惑をおかけ
したことと思います.この場を借りてお詫び申し上げますとともに,ご協力に
感謝いたします.
□第16回年次大会 プログラム委員会からの報告
第16回プログラム委員長
鳥澤 健太郎 (NICT)
第16回年次大会は情報処理学会50周年記念全国大会との共催となり,様々な
意味で従来と異なる大会となりました.年次大会単体では277件の発表があ
り,過去最大数の発表があった第14回大会に比べると若干の減となっておりま
すが,情報処理学会で言語処理のセッションがあったことを考えますと,発表
数を見る限り,言語処理分野における研究は引き続き過去最大の規模で行われ
ていると言っても誤りではないと思われます.
また,二つの大会を合わせての参加者は7,510名となり,両学会の歴史を見渡
しても例を見ない巨大な大会となりました.事務手続きを簡易にするため,年
次大会単独での参加者数の統計はとっておりませんが,例えばチュートリアル
資料の注文が過去最多のチュートリアル聴講者数の3倍近くになる647件に達
しました.また,情報処理学会との共催イベントもいくつか用意された他,
チュートリアルでは,あえて依頼しました他分野の講演に多くの聴講者がつめ
かけ,さらには言語処理分野以外の研究者の聴講が多数見受けられるなど,言
語処理学会の活動を他分野に知らしめることに貢献できたものと考えておりま
す.
プログラム委員長の鳥澤は情報処理学会サイドの運営にも参加させていただき
ましたが,言語処理学会の活動はこれまで想像していた以上に他分野では知ら
れておらず,新たに活動を知られた方々からは,発表数,参加者数,熱心な聴
講者などに関して非常に高い評価を頂きました.年次大会にご参加いただいた
皆様,また異例ずくめの大会の運営・企画にご尽力いただいた実行委員会,情
報処理学会,東京大学の関係者の皆様,プログラム委員会の皆様に厚くお礼を
申し上げます.また,従来と実施形態が大きく変わり,十分にフォローできて
いない部分があり,一部参加者の方々にご迷惑をおかけいたしましたことをお
詫び申し上げます.
以下に大会でのイベントの概要を報告いたします.(所属等は講演時点のもの)
○チュートリアル(3月8日) 6件
- 「推薦システム −機械学習の視点から−」
神嶌 敏弘 氏(産業技術総合研究所)
- 「並列テキスト処理のための環境・ツール(EC2上での並列処理体験付き)」
田浦 健次朗 氏(東京大学)
- 「はてなで利用している言語処理技術」
伊藤 直也 氏(株式会社はてな)
- 「超高速テキスト処理のためのアルゴリズムとデータ構造」
岡野原 大輔 氏(東京大学)
- 「NICT発の言語資源−ALAGINフォーラムの活動を中心に−」
風間 淳一 氏,橋本 力 氏,山田 一郎 氏(情報通信研究機構)
- 「『現代思想』と言葉――脳・認知から遠く離れて」
影浦 峡 氏 (東京大学)
○本体会発表数内訳 (3月9日 〜 3月11日)
口頭発表(テーマセッション・特別セッションを除く) 147件
ポスター 106件
テーマセッション
- 「言語表現」と「言語」のあいだ 5件
- 協調的な自然言語処理 4件
- 情報爆発特別セッション 15件
○Plenary Session(3月9日,情報処理学会と共催)
言語と知識 −最新言語処理研究の射程−
- 講演1「これからの言語処理とその応用」
長尾 真 氏(国立国会図書館 館長)
- 講演2「総合学術オントロジー」
橋田 浩一 氏(産業技術総合研究所 社会知能技術研究ラボ長)
- 講演3「MASTARプロジェクト&ALAGINフォーラム」
中村 哲 氏(情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究センター 副研究センター長)
○招待講演(3月10日,情報処理学会と共催)
- 「The Challenge of the Multicores」
Fran Allen 女史 (IBM名誉フェロー, チューリング賞受賞者)
○ワークショップ
テーマ募集に対して応募がなかったため,本年度は実施せず
□言語処理学会 第16回 通常総会報告
総務担当理事
村上仁一
- 日時: 2010年3月10日(水) 14:30〜15:20
- 場所: 東京大学 本郷キャンパス 赤門総合研究棟 6番教室
- 出席者: 72名,有効委任状 199名 (内 議長への委任 199名)
総会に先立ち,橋田会長より挨拶があり,亡くなられた田中穂積元会長,池原
悟前会長に対して黙祷が行なわれました.
続いて2009年度論文賞1件ならびに第15回年次大会最優秀発表賞2件,優秀発表
賞3件,若手奨励賞3件の受賞式が行なわれました.
続いて,出席者数が定足数(正会員数788名の10分の1)を満たすことを確認し,
第16回通常総会が開催されました.橋田会長が議長として選出され,以下の議
題の審議が行なわれました.
□第16回年次大会 優秀発表賞の選考について
第16回年次大会プログラム委員長
鳥澤健太郎(NICT)
言語処理学会年次大会優秀発表賞は,年次大会において,論文の内容およびプ
レゼンテーションに優れたものと認められた発表論文に与えられる賞です.ま
た,優秀発表賞のうち特に優れたものがあれば,最優秀発表賞として選定する
ことが第11回からとりいれられました.
第12回大会において,優秀発表賞規定が改訂され,発表件数に応じて,優秀発
表賞の件数も増減することとなりましたが,今大会でもこの規定に基づいて優
秀発表賞の選定を進めました.今回の年次大会では277件の発表がありました
ので,授賞件数は5〜6件を目安としました.
78名の選考委員の皆様に優れた発表を得点付きで推薦していただいた結果,67
件が選考対象となりました.次に,選考委員会において,これらに対する投票
を行った結果,得点が高かった上位6件を優秀発表賞として推薦することとし
ました.さらに,この中の上位2件は,得点が僅差であり,また,3位以下との
得点差が大きいため,2件を最優秀発表賞として推薦することとしました.
最終的には理事会におきまして,これらを推薦・諮問し,承認を得ました.以
下が,第16回年次大会において優秀発表賞に選ばれた論文です.
第16回言語処理学会年次大会 優秀発表賞
■最優秀発表賞(2件)
- A4-4 学習効果を最大とするための英文誤り検出の性能評価
永田亮, 中谷和秀 (甲南大)
- PA2-22 文間意味的関係認識による言論マップ生成
村上浩司, 水野淳太, 後藤隼人, 大木環美, 松吉俊 (NAIST),
乾健太郎 (東北大/NAIST), 松本裕治 (NAIST)
■優秀発表賞(4件)
- B3-7 行列分解による多クラス分類とその応用
岡野原大輔 (東大), 辻井潤一 (東大/Manchester大/NaCTeM)
- A1-5 大規模ラベルなしデータを利用した係り受け解析の性能検証
鈴木潤, 磯崎秀樹 (NTT)
- E4-5 TYPO Writer: ヒトはどのように打ち間違えるのか?
荒牧英治 (東大), 宇野良子 (東京農工大), 岡瑞起 (東大)
- D4-2 単語の意味クラスを用いたパターン学習による大規模な意味的関係獲得
Stijn De Saeger, 鳥澤健太郎, 風間淳一, 黒田航, 村田真樹 (NICT)
□第16回年次大会 若手奨励賞の選考について
第16回年次大会プログラム委員長
鳥澤健太郎(NICT)
第15回年次大会より,自然言語処理分野における優秀な若手研究者の育成を目
的として,新たに「若手奨励賞」を設けることになりました.
以下の条件を全て満たす優秀な年次大会発表者が対象となります.
- (2010年の4月1日において)30歳未満であり,かつ,そのことを発表申込時
に申告したもの
- 発表者として登録かつ発表を行ったもの
- 過去に優秀発表賞を受賞していないこと
- 過去に「若手奨励賞」を受賞していないこと
優秀発表賞選考で推薦された論文のうち,優秀発表賞,最優秀発表賞に選ばれ
なかったものの中で,上記の条件を満たすものから,選考委員の審査を踏まえ,
候補となる論文発表者を選出しました.より具体的には,選考委員による投票
の結果,投票された点数の合計で2位,3位が僅差であるのに対して,3位と
4位に大きな差がついたため,3位までの発表者を候補として選定いたしまし
た.
優秀発表賞と同様,理事会におきまして,これらを推薦・諮問し,承認を得ま
した.以下が,第16回年次大会において若手奨励賞に選ばれた方です.
第16回言語処理学会年次大会 若手奨励賞 受賞者
- PB2-11 福田智大(鳥取大) ルールベース翻訳を前処理に用いた統計翻訳
- E3-8 江口萌(NAIST) モダリティ,真偽情報,価値情報を統合した拡張モダリティ解析
- E5-5 木村大翼(東大) 文書長に依存しない文書定数
□ 2009年度論文賞について(既報)
中岩浩巳(NTT)
2010年3月10日,通常総会に先立って2009年度の論文賞の表彰式が行われました.
受賞論文は下記です.
- 著者:隅田飛鳥(北陸先端大),吉永直樹(東京大),鳥澤健太郎(NICT)
- 題名:Wikipedia の記事構造からの上位下位関係抽出
- 掲載:自然言語処理 16巻 3号
- 選考過程(編集委員会報告から):
論文賞は,採録論文30件程度につき1件を目途に授与することになっています
(平成18年1月の編集委員会で提案し,理事会で承認).これに基づき, 2009
年に出版された自然言語処理16巻1号から5号に掲載された論文20件から1件を
推薦することを目標として,以下の手続きで候補論文の選考を行いました.
(1) 第1次選考として,期間中の各号に掲載された論文のうち,査読点数が5点
満点で4点以上の論文9件を対象に,1論文あたり3名の編集委員が読み,10点満
点で採点しました.
(2) その結果,高得点を得た上位4件の論文を第2次候補論文とし,編集委員全
員が1名の持ち票を一票として投票しました.
(3) その最多数得票(過半数)の論文1件について審議し,これを論文賞候補
に推薦することに決しました.
(4) 編集委員会から上記の過程を経て推薦され,理事会で承認された上記論文
について,評議会で2009年度論文賞を授与することが了承されました.
□第17回年次大会について
第17回年次大会(NLP2011)の開催が次のように決まりました.
- 日時:2011年3月7日(月)〜11日(金)
- 場所:豊橋技術科学大学
- 実行委員長:梅村恭司(豊橋技術科学大学)
- プログラム委員長:乾健太郎(東北大学)
□NLP若手の会 第5回シンポジウム
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