梅村恭司(豊橋技術科学大学)
◯ 場所期日
言語処理学会第17回年次大会は、豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)において下記の日程で開催された。
チュートリアル 3月 7日(月)
本会議 2011年3月8日(火)〜10日(木)
ワークショップ 3月11日(金)
次のプログラム委員長からの報告の通り。
◯ 参加状況
事前申し込み | 当日申し込み | 合計 | |
本大会・ワークショップ | 465 | 138 | 603 |
ワークショップ | 242 | 27 | 269 |
◯ 総括
第17回大会は,地方開催であるので鳥取大学で行われた第15回を手本に準備をした。本会議の登録数は600を越え,東京開催であった14回には及ばないが,地方開催であった15回よりも約100名増えて盛況であった。
本大会での開催にあって注意をしたのは,会場までの交通機関であった。豊橋技術科学大学は駅から遠く,公共交通機関は輸送能力が限られるバスであった。推奨する宿泊施設(ホテル日航豊橋)を選定し,そこからバスを手配する運営をした。ホテル日航豊橋に宿泊した方には,移動の負担が小さい大会となっとのではないかと考えている。
運営体制としては,豊橋技術科学大学は自然言語処理に関係の深い教員が多く,充実した布陣で準備ができた。ご苦労をいただいた実行委員の先生,そして,適切なアドバイスをいただいた顧問の先生方に深く感謝したい。
会計面では,多くの協賛企業に援助をいただいた。協賛の企業リスト(敬称略,記載順)は,「株式会社ロックオン/株式会社毎日新聞社/グーグル株式会社/ヤフー株式会社/マイクロソフト株式会社/楽天株式会社/株式会社ミクシィ/株式会社はてな」である。各社には,再度,大会開催へのご支援に感謝したい。ご支援は講師へのサポートに使わせていただくと同時に,その一部は休息室におく菓子類を充実させるなどによって参加者の皆さんに直接に還元した。
また,豊橋技術科学大学,豊橋市コンベンションセンター,財団法人大幸財団などのご後援を受け,準備のためのサポートも言語処理学会の本体から受けた,これらのサポートは,充実した会場設備,豊橋駅での案内,事前および当日の充実したアルバイト体制に使わせていただいた。
年次大会の最終日の平成23年3月11日(金)に,東日本大震災が発生し,多くの方が被災された。心より,お見舞い申し上げる。豊橋の会場も揺れたが,揺れ自身は軽微であり会議を継続することができた。ただ,新幹線が止まり,関東方面への帰宅が困難になった。あとから聞いたところ,豊橋駅で西からの新幹線が止まったために豊橋駅の周辺のホテルはすぐにいっぱいになったとのことであった。言語処理学会の大会の参加者の方については,地震の直後にホテル日航豊橋に相談したところ,コンファレンスの割引価格のまま宿泊できることになった。実は,ホテルからの回答を得て,参加者のかたが路頭に迷うことを避けられることになり,大会実行委員長として胸をなでおろしたという瞬間が,大会期間の出来事のなかで一番記憶に残っている。
□第17回年次大会 プログラム委員会からの報告
乾健太郎(東北大学)
第17回年次大会は,294件の口頭・ポスター発表があった他,併設ワークショップも3年ぶりに復活し,情報処理学会と共催した前回大会を除けば過去最大級の活気あふれる大会となりました.ご参加いただいた皆様,また直接大会の運営・企画にご尽力いただいた実行委員会,豊橋技術科学大学の関係者の皆様,プログラム委員会の皆様に厚くお礼を申し上げます.
今大会もいくつか新しい試みをいたしました.チュートリアル講演は,講師の皆様のご理解とご協力を得て,USTREAMによるライブ配信を実現しました.また,予稿集はCD-ROMのみとし,印刷版の制作を取りやめることにしました.これにより,大会の準備作業を簡素化できるとともに,原稿の提出期限を1週間程度遅くすることができます.ご不便をお感じになった参加者の皆様にはたいへん恐縮の次第ですが,上のような事情がありましたことご理解いただければと存じます.さらに,別項でご報告いたしますように,発表賞の選考手続きを大幅に見直しました.従来の投票とメールによる審議に加え,遠隔会議等による討議を十分に行い,推薦理由を明確にした上で選定するという方式を採りました.これにより,従来に増して責任ある体制で選考することができたのではないかと考えています.
年次大会は本学会会員にとって極めて重要な情報発信・交換の場となっており,今後も会員みんなで育てていく必要があると思います.ご意見,ご批判,ご提案などありましたら,今大会あるいは次回大会のプログラム委員会,実行委員会にお寄せいただければ幸いです.
○チュートリアル(3月7日)
「強化学習の基礎と言語処理への応用」
伊藤秀昭 氏(佐賀大学)
「形式意味論の考え方とその変遷」
戸次大介 氏(お茶の水女子大学)
「Understanding sentences in Japanese」
Edson T. Miyamoto 氏(筑波大学)
「言語生成研究の動向」
徳永健伸 氏(東京工業大学)
○本大会(3月8日〜10日,数字は取消を除く実績発表件数)
口頭発表(テーマセッションを除く) | 153件 |
ポスター | 97件 |
テーマセッション | |
- 複合辞とモダリティ:理論から応用まで | 7件 |
- 不自然言語処理 枠に収まらない言語表現の処理 | 21件 |
- 日本語入力における言語処理 | 10件 |
- Twitterと言語処理 | 6件 |
合計 | 294件 |
○招待講演(3月8,9日)
「ゲノムを読む」
榊佳之 氏(豊橋技術科学大学学長)
「実務翻訳の現状と未来」
田中千鶴香 氏(日本翻訳連盟理事・日本語標準スタイルガイド検討委員長)
○特別講演(3月9日)
「表現から意味へ:言語処理技術と言語の科学」
辻井潤一 氏(東京大学大学院,マンチェスター大学教授
英国・国立テキストマイニングセンター 研究担当ディレクター)
○併設ワークショップ(3月11日)
自然言語処理における企業と大学と学生の関係(パネル3件,招待講演2件)
□言語処理学会 第17回 通常総会報告
村上仁一(総務担当理事)・場所: 豊橋技術科学大学 A101
・出席者: 113名,有効委任状 227名 (内 議長への委任 227名)
まず,橋田会長より挨拶がありました.続いて2010年度論文賞1件,第16回年次大会最優秀発表賞2件,優秀発表賞4件,若手奨励賞3件の受賞式が行なわれました.
続いて,出席者数が定足数を満たすことを確認し, 第17回通常総会が開催されました.橋田会長が議長として選出され,以下の議題の審議が行なわれました.
・2010年度 事業報告 (橋田会長)
橋田会長より資料「第17回通常総会」に基づき,2010年度の事業報告があり内容が承認されました.
・2010年度 決算報告
資料「第17回通常総会」に基づき,田口理事より2010年度の決算報告,榑松監事よりその監査報告があり,いずれの内容も承認されました.
・2011年度 事業計画
橋田会長より資料「第17回通常総会」に基づき,2011年度の事業計画の説明があり,その内容が承認されました.
・2011年度 予算案
橋田会長より資料「第17回通常総会」に基づき,2011年度予算案について提案があり,その内容が承認されました.
・討論内容
+ 剰余金に関して
会場から以下の提案がありました.1)学生会員を無料にしてはどうか?2)別刷りを無料にしてはどうか? 橋田会長より,これらの提案をふまえた上で,理事会において諮りながら今後有効活用していくと報告しました.
+ 会員数に関して
言語処理学会の会員は,横ばいだが,文科系の人を増加させるような施策が欲しいとの要望がありました.
□第17回年次大会 優秀発表賞の選考について
乾健太郎(東北大学)
言語処理学会年次大会優秀発表賞は,年次大会において,論文の内容およびプレゼンテーションに優れたものと認められた発表論文に与えられる賞です.また,優秀発表賞のうち特に優れたものがあれば,最優秀発表賞として選定されます.優秀発表賞の件数は全発表件数の約2%を目途とする規定になっており,今大会でもこれに基づいて選定を進めました.今回の年次大会では294件の発表がありましたので,授賞件数は6件を目安としました.
今大会から,従来よりも少人数の選考委員会を組織し,慎重な議論を重ねた上で選定する方式に変更しました.各授賞論文には議論で合意された授賞理由が付記されます.また,責任を明確にするために,最終選考に関わる委員の名前を公表することとしました.ただし,最終的な責任は委員長の乾が負うものとします.選考プロセスは次の通りです.
まず,各セッションの座長および大会に参加された会員から発表賞の候補の推薦を募りました.その結果,52件の論文への推薦が集まり,これを選考の対象としました.選考は1次選考と最終選考の2段階で行いました.
1次選考では,上記52件の論文を研究分野に基づいて5つのグループに分け,各グループに3名の選考委員を割り当てて審査しました.各グループは,投票に加えて十分な討議を行い,3〜4件の候補を推薦理由を添えて推薦します.この結果,優秀発表賞への推薦が14件(後述の若手奨励賞受賞の資格がある3件を含む),若手奨励賞のみへの推薦が3件となりました.
最終選考では,8名の委員からなる優秀発表賞最終選考委員会を組織し,上記14件の発表賞候補論文を全員で審査しました.全委員による投票および遠隔会議による討議の結果,上位7件を優秀発表賞として推薦することとしました.これは授賞件数の目安6件を超えますが,5位以下に甲乙つけ難い候補が3件あり,議論を尽くした上で3件とも推薦することに決めました.なお,選考に当たっては,文科系,基盤技術,応用技術等の分野間の偏りが大きくならないように配慮し,上記7件の推薦も全発表件数の分布を概ね反映したものになっています.また,上記7件のうち,とくに多くの票を集めた上位1件を最優秀発表賞として推薦することとしました.
9月14日に開催された理事会におきまして,これらを推薦・諮問し,承認を得ました.以下が第17回年次大会において優秀発表賞に選ばれた論文とその授賞理由です.選考にご協力いただいた皆さまにこの場を借りて感謝申し上げます.また,選考が遅れました点,お詫びいたします.
第17回言語処理学会年次大会 優秀発表賞
優秀発表賞最終選考委員会
乾健太郎(委員長,東北大)
梅村恭司(豊橋技科大)
岡崎直観(東北大)
木村俊也(mixi)
工藤拓 (Google)
黒田航 (京工繊大・早大)
高村大也(東工大)
吉岡真治(北大)
■最優秀発表賞(1件)
C3-8 L1正則化特徴選択に基づく大規模データ・特徴集合に適した半教師あり学習
○鈴木潤,磯崎秀樹,永田昌明(NTT)
■優秀発表賞(6件)
B3-5 Web上の定義文からの言い換え知識獲得
○橋本力,鳥澤健太郎,StijnDeSaeger,風間淳一(NICT),黒橋禎夫(京大)
D3-1 階層的モデルを用いた機械翻訳のためのフレーズアライメント
○Graham Neubig(京大/NICT),渡辺太郎,隅田英一郎(NICT),森信介,河原達也(京大)
D4-2 原言語の起源に基づく潜在クラス翻字モデル
○萩原正人,関根聡(楽天)
D5-2 RIBES:順位相関に基づく翻訳の自動評価法
○平尾努,磯崎秀樹,Kevin Duh,須藤克仁,塚田元,永田昌明(NTT)
E1-5 分野に依存しない単語極性を考慮した評判分析のための転移学習モデル
○吉田康久(NAIST),平尾努,岩田具治,永田昌明(NTT),松本裕治(NAIST)
F1-3 様相・条件・否定表現の言語学的分析に基づく確実性判断のためのアノテーション済みコーパスの構築
○川添愛(津田塾大),齊藤学(中華大),片岡喜代子(九大),崔栄殊(一橋大),戸次大介(お茶大)
■授賞理由
C3-8 L1正則化特徴選択に基づく大規模データ・特徴集合に適した半教師あり学習
○鈴木潤,磯崎秀樹,永田昌明(NTT)
本論文は,大規模なラベル無しデータから各特徴素の重要度を判定し,選択した特徴素を用いてモデル学習を行う半教師あり学習法を提案している.授賞理由は次の通り: 1.係り受け解析,固有表現抽出という複数のタスクを対象として優れた従来手法や特徴素数を制限した場合など提案手法と多くのケースとの比較を行っており,得られた結果も興味深いものとなっている.2.半教師あり学習における高速化という問題に対して効果的な特徴素集合の選択,1-passのMap-Reduce計算モデルによる効率化など,重要な提案を行っており,今後の発展が期待できる.
B3-5 Web上の定義文からの言い換え知識獲得
○橋本力,鳥澤健太郎,Stijn DeSaeger,風間淳一(NICT),黒橋禎夫(京大)
本論文の提案は,Web上から定義文を抽出するタスクと定義文中に含まれる用言対を分析するタスクを組み合わせて,Web上から大規模な言い換え知識を高精度に獲得するものである.授賞理由は次の通り: 1.評価実験では,従来手法の検討やその比較も十分に行われており,本研究の優位性が明確である.2.手法は日本語に特化したものではなく,他の言語にも適用可能であるため,世界的に見ても重要な研究成果であると言える.3.本研究の成果は,今後有用な言語資源として利用されることが期待できる.
D3-1 階層的モデルを用いた機械翻訳のためのフレーズアライメント
○Graham Neubig(京大/NICT),渡辺太郎,隅田英一郎(NICT),森信介,河原達也(京大)
本論文は,複数の粒度でフレーズアライメントを行う教師なしモデルを提案している.提案法はZhangらのモデルの自然な拡張で,かつモデルから直接フレーズ抽出ができる点が大きな利点である.授賞理由は次の通り: 1.理論的背景と評価実験共にしっかりと示されており,このようなシンプルなモデルでヒューリスティクスを含む複雑な従来法と同等の結果が得られている点が素晴らしい.2.理論的にもしっかりしており,従来法の20%のフレーズ数で従来法と同等の結果が得られているなど,その効果も実験により検証されている.
D4-2 原言語の起源に基づく潜在クラス翻字モデル
○萩原正人,関根聡(楽天)
本論文は,翻字(transliteration)のための確率モデルに潜在変数を導入することで高性能化を図る手法を提案している.従来の確率モデルでは異なる言語が起源の外来語の翻字プロセスの特徴が平均化されて学習が行われてしまうが,提案手法では翻字の確率モデルに潜在変数を用いることで,それぞれの起源に応じた詳細なパラメータを学習することを可能にしている.授賞理由は次の通り: 1.潜在変数の導入により確率モデルの精度を高めるというアプローチは,近年の自然言語処理技術のトレンドの一つではあるものの,それを無理なく実装可能な形で定式化し,従来手法を明確に上回る性能を達成している点において,本論文は優れた研究成果であると言える.2.実験結果の検討も詳細になされており,本手法の有用性について説得力のある分析結果を提供している.
D5-2 RIBES:順位相関に基づく翻訳の自動評価法
○平尾努,磯崎秀樹,Kevin Duh,須藤克仁,塚田元,永田昌明(NTT)
本論文は,機械翻訳の評価指標によく用いられるBLEUスコア,NIST スコア,METEORスコアを日英翻訳に適用した場合の問題点を明解に指摘し,それに代わる評価指標として翻訳の自動評価に順位相関を使う新しい手法を提案している.授賞理由は次の通り: 1.これまでの評価指標がNグラムの一致率に基づく方法だったのに対し,順位相関を基づく全く新しい方法を提案した点に新規性がある.2.これらの評価指標の性能を英日翻訳データを用いて実験的に評価し,adequacyおよびfluencyの観点において提案手法が良好な性能を示すことを明らかにしている.
E1-5 分野に依存しない単語極性を考慮した評判分析のための転移学習モデル
○吉田康久(NAIST),平尾努,岩田具治,永田昌明(NTT),松本裕治(NAIST)
本論文は,対象となる単語が分野依存の極性を持つのか非依存の極性をもつのかを考慮する過程をモデル化した新しい評判分析手法を提案している.授賞理由は次の通り: 1.分野の違いにより単語の極性が変化するというある意味当たり前のことを分野情報を使いモデル化している.2.定式化がad-hocな方法論ではなく生成モデルとしてフォーマルにモデル化されている.3.Gibbssamplingによる効率的な計算手法を提案している.4.定量的な評価ではF値の向上,定性的な評価では分野依存な単語が抽出されている.実用性の高い手法と言える.
F1-3 様相・条件・否定表現の言語学的分析に基づく確実性判断のためのアノテーション済みコーパスの構築
○川添愛(津田塾大),齊藤学(中華大),片岡喜代子(九大),崔栄殊(一橋大),戸次大介(お茶大)
本論文は,言語情報の確実性判断に関するアノテーションについて,そのガイドラインとコーパス作成の現状を報告している.授賞理由は次の通り: 1.本研究は,命題の確実性を分析するために有用なコーパスを系統的に構築しており,資源性・継続性の点で評価できる.2.特に言語学的にも分析が難しい様相表現に対して,言語学の理論を深く考察しながら詳細な言語分析を行ない,これらをもとに実データをアノテーションする際に不足している点を,独自の手法(言語テストの活用など)で補いガイドラインとしてまとめた点が評価できる.今後はこれらの指針をもとに作成したコーパスの精度(作業者の一致率など)を明確にし,コーパスを公開することで研究コミュニティへの貢献を期待する.
□第17回年次大会 若手奨励賞の選考について
乾健太郎(東北大学)
第15回大会より,自然言語処理分野における優秀な若手研究者の育成を目的として,若手奨励賞を設けています.以下の条件を全て満たす優秀な年次大会発表者が対象となります.
・年次大会開催年の 4月1日 において満30歳未満のもの
・発表者として登録かつ発表を行ったもの
・過去に優秀発表賞を受賞していないこと
・過去に「若手奨励賞」を受賞していないこと
優秀発表賞最終選考の対象になった14件のうち,賞に選ばれなかったものの中で上記の条件を満たすもの(1件),および1次選考で若手奨励賞のみへ推薦とされたもの(3件)から,前記最終選考委員による投票および討議の結果,2位までの発表者を候補として選定しました.
優秀発表賞と同様,理事会におきまして,これらを推薦・諮問し,承認を得ました.以下が第15回年次大会において若手奨励賞に選ばれた方です.
第17回言語処理学会年次大会 若手奨励賞
優秀発表賞最終選考委員会(同上)
F3-5 数原良彦(NTT) 評価指標をマージンに反映したオンラインランキング学習
P2-24 葛原和也(名大) 構文構造に基づく英語表現の自動獲得とその評価
■授賞理由
F3-5 数原良彦(NTT) 評価指標をマージンに反映したオンラインランキング学習
本論文は,ランキング学習をオンライン化(学習サンプル毎に逐次にパラメータを更新)することで学習を高速化する手法を提案している.授賞理由は次の通り: バッチ学習をオンライン化することで学習の高速化を図るというアプローチそのものは過去にも見られるが,本論文ではマージン最大化手法のひとつであるPassive-Aggressiveに基づく自然なアプローチを提案しており,ランキング学習の研究における有用な研究成果の一つであると言える.
P2-24 葛原和也(名大) 構文構造に基づく英語表現の自動獲得とその評価
本論文は,英語の依存構造解析を用いて英語論文中に現われる定型表現を自動獲得する手法を提案している.授賞理由は次の通り: 1.獲得された表現にはn-gramモデルで獲得困難な長距離依存構造も含まれている.実用には精度向上が望まれるが,取りかかりとしては十分に期待できる結果が得られている.2.提案された処理には十分な性能があると同時に単純であることから,資源性と展開性に優れた研究である.
□2010年度論文賞について(既報)
隅田英一郎(NICT)2011年3月9日,通常総会に先立って2010年度の論文賞の表彰式が行われました.
2010年度優秀論文賞の選考:
論文賞は,採録論文30件程度につき1件を目途に授与することになっています(平成18年1月の編集委員会で提案し,理事会で承認).これに基づき,2010年に出版された自然言語処理17巻1号から5号に掲載された論文28件から1件を推薦することを目標として,以下の手続きで候補論文の選考を行いました.
(1) 第1次選考として,期間中の各号に掲載された論文のうち,査読点数が5点満点で4点以上の論文12件を対象に,1論文あたり3名の編集委員が読み,10点満点で採点しました.
(2) その結果,高得点を得た上位3件の論文を第2次候補論文とし,編集委員全員が1 名の持ち票を一票として投票しました.
(3) その最多数得票(圧倒的多数)の論文1件について審議し,これを論文賞候補に推薦することに決しました.
これらの結果以下の論文に決まりました.
タイトル:「自動意味役割付与における意味役割の汎化」
著者:松林優一郎,岡崎直観,辻井潤一
発行号頁:Vol.17 No.4 pp.59-90
□第18回年次大会について
第18回年次大会(NLP2012)の開催が次のように決まりました.
日時:2012年3月13日(火)〜17日(土)※
場所:広島市立大学
実行委員長:竹澤寿幸(広島市立大学)
プログラム委員長:関根聡(ニューヨーク大学、楽天技術研究所)
※ワークショップの開催等により最終日は変更の可能性あり
□震災による2011年度会費免除申請について
2011年4月5日付のメールでお伝えしたように、東北地方太平洋沖地震により被害を受けられた会員の皆様の2011年度(平成23年度)会費は免除されることとなりました。
震災による2011年度会費免除を申請される場合、次の内容を電子メール(nlp@nacos.com) またはFAX (03-3816-0766) にて、件名を「震災による会費免除申請の件」とし、言語処理学会 事務局にご連絡ください。
(1) 会員ID :
(2) 氏名 :
(3) 住所 :
(4) 勤務先名/学校名 :
(5) 被災状況 :
(6) 2011年度会費納入状況 : 納入済み ・ 未納入
※会費免除の場合、納入済み2011年度会費は2012年度会費に充当します
震災による2011年度会費免除についてご不明の点がございましたら言語処理学会 事務局までお問い合わせください。
□その他のお知らせ
- 会誌「自然言語処理」特集号「情報アクセスのための言語処理とその評価」
論文募集のお知らせ
http://www.anlp.jp/home/topic110912.html
- 会誌「自然言語処理」特集号「不自然言語処理」論文募集のお知らせ
http://www.anlp.jp/home/topic110812.html
- 「自然言語処理」への投稿のススメ
http://www.anlp.jp/home/topic110803.html
- 英語版ホームページをオープン
http://www.anlp.jp/en/index.html
- 会誌「自然言語処理」について、JST の電子アーカイブ事業
(Journal@rchive) に採択され、創刊号から2008年度までの論文本文が3月1日よりJ-STAGEで公開されています
http://www.journalarchive.jst.go.jp/japanese/jnltop_ja.php?cdjournal=jnlp1994
学会に関する問い合わせ先
中西印刷株式会社 東京事務所内 言語処理学会事務局
Tel. 03-3816-0738
Fax. 03-3816-0766
〒113-0033 東京都文京区本郷5-29-12-906
e-mail nlp@nacos.com
ニュースレター担当理事
颯々野 学(ヤフー株式会社)
e-mail msassano(at)yahoo-corp.jp