□2015年度論文賞の選考について
編集委員会
2015年に出版された自然言語処理22巻1号から5号に掲載された論文14編より,賞に相応し
い論文を推薦することを目標として,編集委員21名を選考委員とする選考委員会を編成し,
以下の手続きで選考を実施しました.
(1) 候補論文の決定:上記14編の論文のうち,査読点数が5点満点で4点以上の論文およ
び担当編集委員から推薦のあった論文を候補論文とし,計8編の論文を一次投票の対象と
しました.
(2) 一次投票:選考委員は8編の候補論文の中から,COI(※)を考慮して各自に割り当
てられた約3編の論文を読んだうえで,10点満点で採点しました.一論文あたり8名の委員
が審査し,高得点を得た上位3本を選出しました.
(3) 二次投票:田中久美子(編集担当)理事を選考委員長として,COIのない10名を審査
員とする最終選考委員会を編成し,高得点を得た上位3編の論文を対象に,委員が全論文
を読んだ上で,二次投票を行い,審議を行いました.その結果,上位3編の全論文を論文
賞候補とし,うち一次投票・二次投票ともに最高評価を得た論文1編を最優秀論文賞候補
に推薦することに全員一致で決しました.
(最優秀論文賞)
タイトル:Left-corner Parsing for Dependency Grammar
著者:Hiroshi Noji and Yusuke Miyao
発行号頁:Vol.22 No.4 pp.251-288
(論文賞)
タイトル:入れ子依存木の刈り込みによる単一文書要約手法
著者:菊池 悠太,平尾 努,高村 大也,奥村 学,永田 昌明
発行号頁:Vol.22 No.3 pp.197-217
(論文賞)
タイトル:リカレントニューラルネットワークによる単語アラインメント
著者:田村 晃裕,渡辺 太郎,隅田 英一郎
発行号頁:Vol.22 No.4 pp.289-312
以上,3件の論文については第22回年次大会で招待論文として講演いただきました.
※COIについて:
選考にあたっては,以下の条件に一つ以上該当する委員は,当該論文の議事に参加せず,
審査を実施した.
・著者である
・著者と現在同じ組織に所属している
・著者と過去1年以内に共同で研究している
第22回年次大会委員長 加藤 恒昭(事業担当理事・東京大学)
同 プログラム委員長 森 辰則(横浜国立大学)
同 実行委員長 乾 健太郎(東北大学)
○ 場所・期日
言語処理学会第22回年次大会は,東北大学(仙台市)において,次のとおり開催されました.
チュートリアル 2016年3月7日(月)
本会議 2016年3月8日(火)〜10日(木)
ワークショップ 2016年3月11日(金)
○ 参加状況
事前受付 619名
当日受付 162名
招待者 11名
合計 792名
○ プログラム概要
本会議 (3月8日〜10日)
合計308件の研究発表がありました.内訳は次の通りですが,ポスター発表の件数が過去
最多となったことが特筆すべき点です.
・口頭発表 (一般) 133件
・口頭発表 (テーマセッション) 26件
・ポスター発表 149件
上記テーマセッションでは,次の3つのテーマが公募により設定されました.
・文理・産学を越えた翻訳関連研究
・言語教育と言語処理の接点
・対話・言語コミュニケーションにおける主観性とその評価
招待講演
・石川ベンジャミン光一 氏(国立がん研究センター)
「医療分野におけるビッグデータ活用の実態と課題」(3月8日)
・飯間浩明 氏 (国語辞典編纂者)
「国語辞典編纂者の知らない日本語」(3月10日)
招待論文講演 (3月9日)
・能地 宏 氏(国立情報学研究所)
「Left-corner Parsing for Dependency Grammar」
・田村 晃裕 氏(情報通信研究機構)代理発表 隅田 英一郎 氏(情報通信研究機構)
「リカレントニューラルネットワークによる単語アラインメント」
・菊池 悠太 氏(東京工業大学)
「入れ子依存木の刈り込みによる単一文書要約手法」
チュートリアル講演 (3月7日)
・東中竜一郎 氏(日本電信電話(株)),船越孝太郎 氏((株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン)
「対話システムの理論と実践」
・村脇有吾 氏 (京都大学)「言語進化史の統計的研究」
・篠田浩一 氏,井上中順 氏(東京工業大学)
「音声・画像・映像処理における深層学習」
・浅原正幸 氏 (国立国語研究所)
「言語研究のための言語資源整備〜凸最適化からの脱却〜」
ワークショップ (3月11日)
次の2つのワークショップが公募により設定されました.
・言語処理の応用
・論文に書かない(書けない)自然言語処理
○ 総括
言語処理学会第22回年次大会を東北大学川内北キャンパス(仙台市)において,2016年
3月7日(月)から11日(金)にかけて開催しました.参加者は,事前受付619名,当日受
付162名,招待者11名の計792名と,昨年の816名には及ばなかったものの,歴代2番とな
り,各セッションとも活気にあふれる大会となりました.
運営は,事業担当理事を中心とした大会委員会の下にプログラム委員会と実行委員会を配
置して進めています.参加証郵送の時間を節約して事前申込期間を長くするための,参加
証の現地配布も混乱なく皆様に受け入れられたと考えています.とはいえ,運営側が気づ
いていない問題点が残っていないとも限りません.参加者の皆様から忌憚のないご意見を
お待ちしています.
プログラム編成では,ここ数年間に行われてきた各種プログラム改革の結果を踏まえ,原
則として昨年の手順を踏襲しました.すなわち,
・オープニングセッションおよびクロージングセッションの実施
・発表申込と論文投稿の同時受付
・ダウンロード形式での予稿集の配布と予稿集CD-ROMの廃止
・学会論文賞受賞者による招待論文講演
・大会賞(優秀賞および若手奨励賞)の事前選考と大会クロージングセッションでの表彰
を行いました.これらについては,年次大会のスタイルとして定着しつつあると考えます.
一方で,今回,大会賞選考にあたって,プログラム編成と大会賞選考過程の分離を試みま
した.昨年までは,プログラム編成を行い,セッション構成完成後に,セッションに対し
て論文賞の選考委員を割り当て,論文賞の選考過程に入るという手順で行っていました.
これに対して,今回は,各論文毎に選考委員を割り当てる形式とすることにより,セッシ
ョン構成とは独立に大会賞の選考が行えるようにしました.その主な目的は,選考時間の
確保です.さらに,選考の質の向上をめざし,1論文当たりの大会賞選考委員の増員を行
いました.
今回は大会会期が従来よりも10日間程度早かったということもあり,上記の改変を行った
上でも,選考のスケジュールに余裕がほとんどない状況でしたが,その中で,関係各位に
は多大なるご尽力をいただきました.誠にありがとうございました.
今大会では会場に恵まれ,ポスターセッションの会場をはじめとして,それぞれにゆとり
のある各セッションの会場を,繋がった建物の中にうまく収めることができ,休憩室とあ
わせて設置されたスポンサー様の展示スペースも加わって,全体を勝手のよいものに構成
できたと考えています.参加者の皆様からも好評を頂いていたようで,たいへん嬉しく
思っています.
会計的には,昨年に続く多数の参加者に支えられ,一部の参加費を見直したこともあって
参加費収入の増加があり,あわせて昨年度を更に大きく上回るスポンサー様からのご支援
や,公益財団法人仙台観光協会との協賛,一般財団法人青葉工学振興会からの助成によっ
て,収入は大きく増加しました.支出は,東北大学大学院情報科学研究科との共催により
本会議会場を無料で使用させていただいたこと等で,抑えることができました.このため
今回も黒字決算となっています.会計からはややずれますが,今大会より事前申し込みの
参加費をクレジット決済で払い込めるようにいたしました.多くの参加者にご利用いただ
き,参加者の皆様の便の向上に貢献できたかと思っています.
上でも触れましたように,本年もたいへん多数のスポンサー様にご支援を賜りました.ま
た今年より,大会の特定の項目にご支援を頂く冠スポンサーを設けましたが,こちらにも
多数のご賛同を頂きました.心より感謝いたします.昨年度に続けて,スポンサー様との
朝食会を実施させていてだき,今後の協力と発展にむけた実りある情報交換の場とさせて
頂きました.スポンサーの皆様には,今後も一層のご支援・ご協力をお願いできればと考
えます.
300件を超える研究発表,800名近い参加者,30社を超えるスポンサー様と,年次大会は,
以前のそれとは異なる規模のイベントとなっています.プログラム編成は過熱気味で,改
善が必要です.学会が一般社団法人となったことを受けて,今回から「総会」が無くなり
ましたので,プログラムに時間の余裕ができたはずなのですが,それでも,発表件数が非
常に多いため,3日間の5並列セッションで,本会議をすべて収容することが難しくなりつ
つあります.また,今回は,ポスター発表の件数が過去最多となりましたが,今後も,ポ
スター会場の確保が重要な課題となると考えます.ポスター発表が濃密な意見交換ができ
る有効な場であるという認識が浸透した結果かと思いますので,今後更に件数が増えるこ
とが予想されます.
会場の確保を含めて,大会運営は本当に厳しくなっています.そのような状況の中で,半
年以上の期間,年度末にかけてのお忙しい時期に気持ちよくそして効率的に仕事をこなし
てくださったプログラム委員,実行委員の皆様のご尽力に,委員長として感謝いたします.
そして,参加者の皆様一人一人が本大会を盛り上げてくださり,これだけの盛会としてい
ただいたことに.委員会一同として,深く感謝いたします.
今後も,学会会員にとってより有効な情報交換の場となるように,必要な改善をおこない,
年次大会をますます発展させていきたいと考えています.皆様からのご意見・ご提案をお
待ちしております.
第22回年次大会プログラム委員長 森辰則(横浜国立大学)
言語処理学会年次大会 優秀賞は,年次大会において,論文の内容に優れたものと認めら
れた発表論文に与えられる賞です.また,優秀賞のうち特に優れたものがあれば,最優秀
賞として選定されます(言語処理学会年次大会優秀賞規定).同様に,若手奨励賞は,年次
大会において,論文の内容に優れたものと認められた発表論文の発表者であり,かつ,以
下の条件を満たす者に与えられる賞です(言語処理学会年次大会若手奨励賞規定).
・年次大会の開催年の4月1日において満30歳未満のもの
・講演者として登録かつ講演を行ったもの
・過去に優秀賞を受賞していないこと
・過去に若手奨励賞を受賞していないこと
従来,大会賞は,年次大会の終了後三ヶ月以上かけ審査し,表彰は次年度になされてきま
したが,一昨年より,参加者の利便性を考慮し,大会期間中に表彰することとしました.
今年もこれを踏襲し,年次大会の開始前に全論文を対象に審査を行い,大会賞を決定しま
した.
大会賞の選考のための内規では「優秀賞の中で特に評価の高いものを0件から2件の範囲で
最優秀賞とする.優秀賞は全発表件数の約2%を目安とする.若手奨励賞の受賞者は数件
(上限は5件)」と規定されており,今大会でもこれに基づいて選定を進めました.今回の
年次大会では308件が優秀賞の対象となる論文であり,優秀賞の授賞件数は6件前後を目安
としました.また若手奨励賞の対象となる論文は194件でした.
前回大会に引き続き,選考委員会を組織し,慎重な議論を重ねた上で選定を行いました.
今回,選考委員会は計119名で構成されました.各授賞論文には議論で合意された授賞理
由が付記されます.また,責任を明確にするために,最終選考に関わる委員の名前を公表
します.ただし,最終的な責任は委員長の森が負うものとします.
大会賞の選考は,1次選考と最終選考の二段階で行いました.1次選考では全ての論文を3
つのグループ(言語学・言語分析,基盤技術・言語資源,応用技術)に分け,各論文に対し
3名の選考委員を割り当て,審査を行いました.選考委員はそれぞれ8件程度の論文を担当
し,各論文に対して,総合評価(5段階),新規性(5段階),有用性(5段階),読みやすさ(5
段階),推薦理由を提出します.各グループの主査は選考委員の審査結果に基づいて論文
を順位付け,各グループにおいて優秀賞候補5件,若手奨励賞候補5件を目安として候補リ
ストを作成しました.この結果,優秀賞候補14件と若手奨励賞候補17件(うち5件が優秀賞
候補をかねる)が最終選考へ進みました.また最終選考委員会の委員長は,利益相反を考
慮し,森が担当しました.
最終選考では,候補論文との利益相反を考慮して7名の委員からなる大会賞最終選考委員
会を組織し,まず,上記14件の優秀賞候補論文を全員で審査しました.全選考委員による
重み付き投票および遠隔会議による討議の結果,5件を優秀賞として推薦することとしま
した.今年は授賞件数の目安6件程度に従った数の受賞となりました.上記5件のうち,特
に高い評価を集めた上位2件を最優秀賞として推薦することとしました.若手奨励賞につ
いては,1次選考で推薦された17件(うち5件が優秀賞候補を兼ねる)の中から,全選考委員
による重み付き投票と討議の結果,先に優秀賞に選ばれた2件を除き,最終的に5件を若手
奨励賞に選定しました.
第22回言語処理学会年次大会優秀賞最終選考委員
森 辰則 (委員長、横浜国大)
加藤 恒昭 (東京大学)
吉田 稔 (徳島大学)
小川 泰弘 (名古屋大学)
橋本 泰一 (LINE)
金丸 敏幸 (京都大学)
渋木 英潔 (横浜国大)
■言語処理学会第22回年次大会 最優秀賞 (2件)
B3-1 単語分散表現獲得法の縮約モデリング
〇鈴木 潤, 永田 昌明 (NTT)
本論文では,単語の分散表現である単語埋め込みベクトルについて,縮約モデリング手法
を用いることにより,必要とする記憶容量を削減する手法を提案しています.単語埋め込
みベクトルが,予め用意した基底ベクトルの連結で表現されることを制約として加え,そ
の制約下で単語埋め込みベクトルを獲得する手法を検討しています.さらに,最適化アル
ゴリズムについても,従来の単語埋め込み学習法にk平均クラスタリングを加え,交互に
最適化することにより,制約を満たした単語埋め込みベクトルを獲得する手法を導入して
います.評価実験により,提案手法を用いると,分散表現としての性能を保ちつつ,必要
とする記憶容量が実際に大幅に削減されることが実証されています.これらの成果は,新
規性が高く,様々な場面で即戦力として活用が期待できることから高く評価でき,また,
論文としての完成度も高いことから,最優秀賞にふさわしい論文であると考えます.
A6-4 分散表現による文脈情報を用いた選択選好モデル
〇大野雅之, 井之上直也, 松林優一郎, 岡崎直観, 乾健太郎 (東北大)
本論文では,述語における項の選択選好性の計算において,分散表現を用いた構成的な意
味計算により,先行文脈の述語表現から得られる項の付加的な意味情報を考慮するモデル
を提案しています.Van de CruysのSVOモデルをベースとして,述語と項の関係を計算す
る際,ある項がそれ以前の文脈で出現した際の述語との関係もベクトル合成に含まれる仕
組みです.評価タスクや実験ベースラインの設定も信頼性や有用性を評価しやすく適切で
あり,よい結果が得られ,それに充分な考察が加えられています.照応解析を対象として
いますが,一般の選択選好のモデルとしても使うことができ,様々な応用に用いることが
できると考えられます.様々な応用への展開等,今後の発展にも期待でき,最優秀賞にふ
さわしい論文です.
■言語処理学会第22回年次大会 優秀賞 (3件)
A7-5 談話内における局所文脈の動的分散表現
〇小林颯介, 田然, 岡崎直観, 乾健太郎 (東北大)
本論文は,コンピュータによる文章理解力を測るための質問応答タスクに対し,解答候補
となるエンティティの過去の出現の局所文脈を分散表現により表現するための,新たな手
法を提案しています.提案手法は,複数の出現をアテンションメカニズムという手法によ
り重み付けするモデルと,ある局所文脈を別の局所文脈への入力とすることによって意味
の組み合わせを行うモデルの2つのモデルから構成され,これらを組み合わせることによ
り,既存手法を上回る精度を得ています.提案手法は,談話全体の文脈を,各エンティテ
ィについて組織的に計算するという大変興味深いもので,実際に,評価実験において
state of the artな性能を達成しています.複数の手法を意欲的に取り込み,論理展開や
分析からも十分な納得感が得られる論文であり,優秀賞に値します.
P20-3 現代日本語における節の分類体系について
〇丸山岳彦 (国語研), 佐藤理史, 夏目和子 (名大)
本論文は,言語表現の単位である「節」に注目し,現代日本語における従属節を形態的・
機能的な観点から体系的に整理したものです.節は,語や文といった他の言語表現単位と
は異なり,二つの節同士が連結して上位の要素(=文)になるだけでなく,下位の要素で
ある語と連結して文の一部になることもあり,単純な連結に留まらない振る舞いを示しま
す.節の種類を整理することは,係り受け解析やテキストの分割処理などへ一定の指針を
与えることに繋がり,今後の解析技術の開発に大きく役に立つ点で高く評価できます.論
文の後半には,今回の分類体系上,節の種類を認定する時に問題となる事例が挙げられて
おり,日本語学や言語学などの研究領域との協力が一層期待されます.
A4-4 複数の事前並べ替え候補を用いた句に基づく統計的機械翻訳
〇小田悠介 (NAIST), 工藤拓, 中川哲治, 渡辺太郎 (グーグル)
句に基づく統計的機械翻訳(PBSMT)において,複数の事前並べ替え候補を単一のラティ
ス状のグラフ構造にまとめ,グラフ構造上で翻訳することで,単一の並べ替えから翻訳す
る手法に対して精度および速度を改善しています.日英など語順の大幅に異なる言語間で
の翻訳において,事前並べ替えにより原文の語順を目的言語の語順に近づけた後にPBSMT
を行う手法が一定の精度を出していますが,本論文では,複数の事前並べ替え結果を,そ
の信頼度を考慮しつつ,同時に比較しつつ扱うことを可能にしました.事例観察を含めた
多角的で信頼性の高い評価を行っていて,複数の言語対での翻訳で一貫して精度を改善で
きるという有用性の高さを示しています.優秀賞にふさわしい論文です.
■言語処理学会第22回年次大会 若手奨励賞 (5件)
A5-4 Factorization Machines を用いた未知の固有表現分類
平田亜衣 (首都大)
本論文は,機械学習の一つである Factorization Machines をベースとして,未知の固有
表現の分類を試みた論文です.関連研究であるPrimadhantyらの研究との違いを明確に説
明し,当該タスクへの適用性を明確に述べており,論文としての完成度は比較的高いと思
います.実験の結果や分析が十分ではなく,まだ速報的な報告である印象ですが,今後の
当該タスクの改善や発展を期待させる良い論文です.
A4-2 句構造へのアテンションに基づくニューラル機械翻訳モデル
江里口瑛子 (東大)
本論文では,ニューラルネットワークによる機械翻訳において,句構造構造を利用する手
法を提案しています.具体的には,エンコーダ側に隠れ層として句構造情報を取り入れる
とともに,隠れ層の寄与分を考慮するアテンション機構を組み入れています.実験では,
対数尤度に関する評価において,アテンション機構が有効に機能していることを示してい
ます.提案手法は句構造情報を利用している点から,英日など構造の大きく異なる言語対
に対するモデルとして大いに期待できる研究です.
B3-4 上位語・下位語の射影関係とそのクラスタの同時学習
山根丈亮 (豊田工大)
本論文は,自然言語処理でも重要な言語資源の一つである上位語・下位語の概念の獲得手
法に関する論文です.単語ベクトルと射影行列の学習で用いる類似度を統一し,射影行列
の更新とクラスタリングを同時に行い,さらに負例を用いることで上位概念の選択精度を
向上させています.従来手法との違いを明確に説明し,全体としても性能が向上している
ことが実験により証明されています.抽出された上位語・下位語全体としての評価のみな
らず,どのような単語だと効果的なのかといった,言語に踏み込んだ分析があるとより良
かったと思います.
E5-2 翻訳教育での利用を意識した翻訳エラー分類体系の再構築
豊島知穂 (関外大)
従来,翻訳の研究分野では,翻訳誤りを分析し,分類する研究は行われてきましたが,翻
訳学習者への教育を目的として,誤りを一貫して分類する際の手続きについて検討した研究
はほとんどありませんでした.本論文では,そこに注目して翻訳エラーの種類を分類した上
で,それらを判断するための決定木を作成しています.この基準に従ったエラー分類を作業
者が実現できるか,実データを用いて検証することで,分類基準の有効性や特性を明らかに
した点が高く評価できます.この分類基準による誤り分析の事例を蓄積することで,異なる
ジャンルによる翻訳エラーの比較を行ったり,エラーの種類による翻訳の質の評価を行った
りできる可能性を秘めており,今後の応用研究が期待される論文です.
E1-1 分散表現を用いたニュース記事の重複排除
大倉俊平 (ヤフー)
本論文は,記事間の類似性を反映した分散表現ベクトルを得るための学習を最適化問題か
ら導出し,貪欲法により高速に類似記事を排除する手法を提案しています.重複排除の技
術はニュース記事に限らず多くの対象で有用性があり,提案手法を実システムに適用した
オンライン環境で評価を行っている点で実用性が高く評価されます.他手法との比較や重
複排除後の内容が実際に最適であるかの調査不足が見受けられますので,これらの点につ
いて検討を加え,さらに興味深い研究になることを期待します.
総務担当理事 河原大輔 (京都大学)
・日時: 2016年3月8日(火) 12:20〜13:20
・場所: 東北大学 川内北キャンパス 講義棟 B201
・出席者: 代議員26名(内、委任状提出者1名、書面による議決権行使者3名)、理事:12名、監事:2名
議題
・第1号議案 2015年度決算報告
資料「第22回通常総会」に基づき,2015年度の決算報告があり,その内容が承認されまし
た.
・第2号議案 理事の選任
以下の15名が理事として選任されました.
徳永健伸(東京工業大学)
佐藤理史(名古屋大学)
奥村学(東京工業大学)
乾健太郎(東北大学)
宮尾祐介(国立情報学研究所)
加藤恒昭(東京大学)
渡辺日出雄(日本IBM)
中野幹生(HRI-JP)
山本和英(長岡技術科学大学)
関根聡(ニューヨーク大学)
荻野紫穂(武蔵大学)
永田昌明(日本電信電話株式会社)
落谷亮(富士通研究所)
駒谷和範(大阪大学)
河原大輔(京都大学)
・第3号議案 監事の選任
以下の2名が監事として選任されました.
赤峯亨(日本電気株式会社)
江原暉将
・第1号報告 2015年度事業報告
資料「第22回通常総会」に基づき,2015年度の事業内容が報告されました.
・第2号報告 2015年度監査報告
資料「第22回通常総会」に基づき,2015年度の監査の結果,会計監査,業務監査ともに問
題のないことが報告されました.
・第3号報告 2016年度事業計画
資料「第22回通常総会」に基づき,2016年度の事業計画が報告されました.
・第4号報告 2016年度予算案
資料「第22回通常総会」に基づき,2016年度の予算案が報告されました.
・第5号報告 2016年度代議員構成
資料「第22回通常総会」に基づき,2016年度の代議員の一覧が報告されました.
配布資料 第22回通常総会 資料: http://www.anlp.jp/doc/gm/gm22_2015.pdf
言語処理学会第23回年次大会の開催予定は以下の通りです.
日時: 2017年3月13日(月)〜17日(金)
場所: 筑波大学 筑波キャンパス
春日エリア (つくばエクスプレス つくば駅から徒歩5分)
大会委員長: 加藤 恒昭 (東京大学)
大会実行委員長: 山本 幹雄 (筑波大学)
大会プログラム委員長: 相澤 彰子 (NII)
詳細が決まりましたら http://www.anlp.jp/ で順次お知らせいたします.
過日ご案内したように,言語処理学会はCOLING 2016を2016年12月11日から16日にかけて,大阪国際会議場(中之島)にて開催いたします.
ホームページ(http://coling2016.anlp.jp/)も一新され情報が増補されていますので、
是非ご覧ください.
(1)論文投稿締切(2016年 7月15日)が近づいています。投稿の準備をお願いします.
(2)TUTORIAL7件、WORKSHOP19件が決定しました.聴講や投稿のご参考になさってください.
(3)デモ論文の募集も始まっています.こちらへの投稿もご検討ください.
(4)スポンサーを募集しています。幅広い応援をよろしくお願いします.
日本開催を楽しみましょう.
中西印刷株式会社 言語処理学会事務局
〒602-8048 京都市上京区下立売通小川東入ル
e-mail nlp (at) nacos.com
ニュースレター担当理事
渡辺日出男 (日本IBM)
e-mail hiwat (at) jp.ibm.com