言語処理学会ニュースレター
Vol. 9 No. 1 (2002年2月27日発行)
目次
- □ 故 中村順一 評議員追悼文
- □ 言語処理学会第8回年次大会(NLP2002)プログラム
- □ 大会併設ワークショップ「社会情報基盤のための言語・メディア処理」プログラム
- □ 第9回 機械翻訳の理論的方法論的課題に関する国際会議(TMI-2002)開催案内
訃報
本学会評議員の中村順一さん(京都大学総合情報メディアセンター教授)が、平成13年12月23日に亡くなられました。享年45歳。中村順一さんは、本学会の設立時の1994年4月より4年間、本学会理事(事業担当)を務められ、会則の作成やニュースレターの発行、学会ウェブページの作成等、本学会の活動を軌道に乗せるために多大な貢献をされました。同時に、1994年から5年間は会誌編集委員も務められ、理事退任後の1998年度からは評議員を務められていました。
ここに謹んで哀悼の意を表します。
中村順一君の早すぎる死を悼んで
彼がいなくなった今も、中村君のホームページは、彼の最後の3年間の人生を語っている。写真の彼は、薬の副作用のゆえに少し浮腫んで見えるが、私が知りあった頃、 学生の頃の彼と変わらない。ほとんど毎日のように付けていた日記も、ある。
病状が悪化した後の2日間、11月21日・22日に、我々を心配させまいと書いた記述が、悲しい。その直前に見舞った友人によると、回復した後の研究のことを元気に話したという。その友人が「日記が中断して皆が心配している」と伝えたことで、 この、最後の2日分の日記が書かれた。彼らしいと思う。見舞ったときも、長い時間が一瞬に感じるように、話した。心配をかけまいという配慮とともに、やりたいことが山ほどあったのだろう、無念に思う。
日記を読むと、病状への不安の中で、いつもと変わらない中村君がいる。毎日のように、最新のPC、モバイル製品、電気製品を買ってきて、使いにくい、良くなったなどと批評をしている。私にはわからない技術的なことを、ぶつぶつとつぶやいている。彼とは、京都大学で機械翻訳プロジェクトの研究を一緒に行った。昨日のことのように思う。プロジェクトでやらねばならない仕事の期限が迫ると、私は小説を読むことに逃避し、彼は、すぐには必要のない新しい計算機やプログラムをインストールすることに逃避していた。新しい電子製品、プログラムで、彼が知らないことはなかった。変わっていない。
京都大学での機械翻訳プロジェクトは、4年間という短期間であった。しかし、私にとって、そして、多分彼にとっても、研究者として一番印象的な期間であった。研究者としての基盤が作られたときであった。常時6-7名ほどの企業からの研究者がグループとして参加しており、年齢が近いこともあって、彼はそのグループの中核にいた。プロジェクトの基幹言語であるGRADEは、彼が詳細設計し開発した。彼の博士論文の成果である。世界に誇れるものであった。プロジェクト中には、議論が沸騰して、夜の12時を過ぎることも、少なくなかった。高校時代、水泳部だったという彼は、バタフライが得意で、もっとも元気な人でもあった。
人がよくてお節介なところがある彼は、他人が受け持っている仕事にもよく口を出した。口だけでなく、結局は自分がその仕事をやってしまう、というふうであった。文句をいいながらも、人を助けるのが好きだった。得意げな彼を、思い出す。
言語処理学会が創立されたときも、そうであったという。私は英国にいて知らないが、理事として、会則を作るなどの仕事を引き受けて活躍したという。多分、雑用だと文句をいいながら、それでも楽しそうに、有能に、仕事をしたのだろうと思う。お節介だが悪気のない彼は、機械翻訳プロジェクトのメンバから、また、彼と知り合うことになった若い研究者・学生から、兄のような感じで慕われていた。
日記の中でも、友人との会話の中でも、次の研究テーマを熱心に語った彼は、もういない。言語処理と我々の学会に彼がした、そして、したであろう貢献は、大きくて切ない。
あまりに個人的な文章になった。彼の早すぎる死に、動転している。無念だとしか言いようがない。ご冥福をお祈りする。
言語処理学会第8回年次大会(NLP2002)プログラム
開催日時: | 2002年 | 3月16日(土) | ワークショップ | |
3月17日(日) | チュートリアル | |||
3月18日(月)~20日(水) | 本会議 | |||
会場: | けいはんなプラザ(京都府相楽郡精華町光台1-7) | |||
懇親会: | 3月19日(火) 18:30-20:00 けいはんなプラザ5階ボルガ |
《併設ワークショップ:3月16日(土)》
テーマ:「社会情報基盤のための言語・メディア処理」 |
主催者:橋田浩一氏(産総研),柴田正啓氏(NHK技研),長尾確氏(名古屋大学) |
(プログラムは、次の記事をご覧下さい) |
《チュートリアル:3月17日(日)》
10:00-12:00 | 「言語表現を言い換える技術」 |
九州工業大学/奈良先端科学技術大学院大学 助教授 乾健太郎 氏 | |
13:00-15:00 | 「自動作詞システムから生まれる計量言語学の新分野」 |
国立国語研究所 情報資料部門第1領域長 伊藤雅光 氏 | |
15:15-17:15 | 「認知脳科学からみた言語」 |
東京大学 助教授 酒井邦嘉 氏 |
《招待講演:3月18日(月)》
13:00-14:30 | Deirdre Wilson 氏 (University College, London) |
テーマ: Inference and Relevance in Pragmatics | |
14:45-16:15 | Jerry R. Hobbs 氏 (SRI International) |
テーマ: Relevance and Abduction |
《パネル討論:3月19日(火)》
13:00-15:00 | 自然言語処理における産官学の連携」 |
司会者: | 田中英輝 氏(ATR) |
パネラー: | 平川秀樹 氏(東芝),古賀勝夫 氏(ノヴァ株式会社), |
井佐原均 氏(通信総合研究所),前田広幸 氏(奈良教育大学), | |
島津明 氏(北陸先端科学技術大学院大学),奥村学 氏(東京工業大学) |
<→本会議[一般講演・ポスター発表]プログラム>
<→参加費,プログラム委員および実行委員>
大会併設ワークショップ「社会情報基盤のための言語・メディア処理」 プログラム
現在の自然言語処理技術で人間の言語活動を代替することは不可能です。今世紀における自然言語処理技術の使命は、人間社会の中での情報の流通を支援する社会基盤を構築することでしょう。たとえば、MPEG-7、GDA、Semantic Web等は、さまざまな情報コンテンツの意味構造を明示化し、そうした情報コンテンツを広くかつ効果的に共有・再利用する社会情報基盤を指向する試みと考えられます。こうした技術の射程は、テキストコンテンツにとどまらずマルチメディアコンテンツを含み、さらにセンサネットワーク等の情報基盤と組み合わさることによって物理的な生活空間にも及ぶでしょう。そこで、以下の要領でワークショップを開催して、来たるべき社会情報基盤と、言語・メディア処理技術がその中で果たすべき役割について意見を交換し、このような展望を具体的に描き出したいと思います。どうぞ奮ってご参加下さい。
日程: | 3月16日(土) |
会場: | けいはんなプラザ5階黄河 |
プログラム:
10:00-10:05 | 開会の辞 |
10:05-10:45 | 「デジタルコンテンツの意味的拡張とその応用」 |
長尾確(名古屋大学) | |
10:45-11:25 | 「アノテーション技術に基づくWebアクセシビリティ・トランスコーディングシステム」 |
高木浩伸・浅川智恵子(日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所) | |
11:25-12:05 | 「放送用コンテンツハンドリングのインフラとしての自然言語」 |
柴田正啓・山田一郎・金淵培(NHK放送技術研究所) | |
12:05-13:30 | 休憩 |
13:30-14:10 | 「Bluetoothに基づくマルチモーダル対話環境」 |
住田一男(東芝) | |
14:10-14:50 | 「モバイル端末向けコンテンツ記述」 |
中川裕志(東京大学) | |
14:50-15:30 | 「位置情報流通プラットフォームと情報の位置指向構造化」 |
三浦信幸(株式会社ロケーション・エージェント) | |
15:30-15:50 | 休憩 |
15:50-16:30 | 「インタラクティブなグラウンディングのためのコンテンツ」 |
橋田浩一(産業技術総合研究所・科学技術振興事業団) | |
16:30-17:30 | パネルディスカッション |
司会: 橋田、パネリスト: 他の講演者 |
実行委員会:橋田浩一・柴田正啓・長尾確
第9回 機械翻訳の理論的方法論的課題に関する国際会議(TMI-2002)開催案内
開催日時: | 2002年3月13日~2002年3月15日 | 本会議 |
2002年3月16日~2002年3月17日 | ワークショップ/チュートリアル | |
開催会場: | 本会議 | NTT京阪奈ビル |
ワークショップ/チュートリアル | けいはんなプラザ | |
URL: | http://www.kecl.ntt.co.jp/events/tmi/ |
TMIは機械翻訳に関する代表的な学術的国際会議です. ワークショッ プ/チュートリアルは言語処理学会の年次大会と同日,同会場で開催されます.
- 問い合わせ先
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〒 619-0237 京都府相楽郡精華町光台 2-4
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
Francis Bond
TEL 0774-93-5313, FAX 0774-93-5345
email: bond@cslab.kecl.ntt.co.jp
学会に関する問い合わせは「学会センター関西」にお願いします.
- 学会センター関西:
-
〒560-0082 豊中市新千里東町1-4-2
千里ライフサイエンスセンタービル14F
学会センター関西 (担当: 山元 理恵)
Tel: 06-6873-2301, Fax: 06-6873-2300
Email: o-socie@bcasj.or.jp
- 言語処理学会事務局:
- 〒152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1
東京工業大学 大学院情報理工学研究科
計算工学専攻 田中研究室内
Tel: 03-5734-3046, Fax: 03-5734-2915
URL: http://www.crl.go.jp/nlp
- ニュースレター担当(佐藤理史)
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〒 606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻
Fax: 075-753-5962
Email: sato@i.kyoto-u.ac.jp