言語処理学会ニュースレター

Vol. 9 No. 3 (2002 年 8 月 9 日)


目次:

第8回通常総会の報告

新会長就任挨拶

会長退任挨拶

ACL2003(札幌開催)の準備状況について

会議案内

ホームページ(アドレス)の変更のお知らせ


第8回通常総会報告

去る6月28日,正会員220名(委任状195名を含む)の出席を得て,通常総会が 開催され,2001年度の事業報告と2002年度の事業計画が承認されました.

第8回通常総会次第
日時 2002年6月28日(金) 16時〜17時
会場 東京工業大学 西8号館E棟 10階大会議室
(東京都目黒区大岡山2-12-1)

  1. 開会
  2. 会長挨拶(会長欠席のため,島津副会長が代理で挨拶)
  3. 第8回年次大会優秀発表賞・論文賞授賞式
  4. 議長選出
  5. 2001年度活動報告
  6. 2001年度決算報告,監査報告
  7. 2002年度事業計画提案
  8. 2002年度予算計画提案
  9. 2002年度評議員構成
  10. 2002年度役員構成
  11. 閉会


新会長就任挨拶

会長に就任することになって
島津 明

このたび言語処理学会の会長を務めることになりました.会員の皆様ととも に学会を実のあるものにしていきたいと思いますので,よろしくお願いいた します.評議員,理事の方々とも力を合わせて言語処理学会の活動を支えて 行きたいと思っています.

言語処理学会は,様々な分野の人々が言語という対象について,情報処理の 視点から,あるいはそれにつながるという視点から,お互いに意見を交わし, それぞれの研究成果を伝え学ぶ場としてスタートし,8年が経過しました. 言語処理学会は多くの会員が研究者であるという学会です.学会らしい学会 と思います.言語処理学会のこれまでを社会化,国際化,電子化という視点 で振り返り,言語処理学会の今後を考えてみようと思います.社会化,国際 化,電子化という見方は,いろいろなところでされていますが,これらは言 語処理学会の活動をみる上でも適当と言えますので,これらの視点からみて みようと思います.

社会化は,学会が関連する人々にどれだけ開かれているか,関連する人々が どれだけ学会を活用できているか,社会とどれだけつながりを持てているか といった点で見れると思いますが,その点で,言語処理学会は,言語を対象 にする様々な分野の人々が集う学会を目論んでスタートしたということで, 社会化が一つのねらいであったと思います.そのような点からみると,雑誌 「自然言語処理」の掲載論文の多くは,工学分野です.一方で,大会では言 語学分野の参加者や発表が多いのも事実です.これらのことは,研究のスタ イルや研究のペースが違うということも関係があるかもしれません.編集委 員や査読者には言語学関連の委員が何人もおられますので,もっと投稿があ ればと思います.「自然言語処理」の論文にはページ数の制限がありません. 投稿料(別刷代)も安いです.場合によっては学会が別刷代を補助します.こ のような特徴の雑誌ですから,これまでの投稿分野だけでなく,言語学,音 声処理,認知科学,情報検索,メディア研究,HCI,教育,脳科学など,言 語に関して研究している様々な分野の方々にも利用していただければと思い ます.特集号については,任意のグループで企画できますから,積極的に活 用していただければと思います.言語に関する研究は,その重要性から様々 な分野で行われています.言語という視点から多様な問題を理解する論文が 集まり,そこからコミュニケーションが生まれ,新たな地平も見えてくるの ではと期待します.

会員の発表の場として年次大会やワークショップもあります.ワークショッ プは年次大会の際に開催していますが,これは大会以外のときにも可能です から,様々な分野の会員の皆様が必要に応じて開催し,研究活動に役立てて いただければと思います.

次に国際化です.これには論文の国際化,研究者の国際交流があります.ま ず,論文ですが,雑誌「自然言語処理」は,編集委員に海外委員もおり,ま た海外からの投稿もありますが,論文の国際化は,英文誌による出版をもっ て言えることと思います.言語処理学会は実際のところ英文誌を出すために 作られた学会でもあります.学会ができる前から現在にいたるまで,複数の 出版社と交渉し,英文誌出版に向けた努力がなされてきました.学会が軌道 に乗って,可能性が見えてきており,何とか実現できればと思います.

国際交流に関しては,アジア言語処理関連学会連合への取り組みがあります. アジア言語処理関連学会連合は辻井前会長のご努力により形が見えてきまし た.日本は,言語処理研究者が多く,優れた研究を進めていることから,言 語処理学会がアジア言語処理関連学会連合に対して果たす役割は大きいと言 えます.学会としてアジアの言語処理の進展に寄与できればと思います.

次に電子化です.種々の面で学会活動の電子化が進められて来ました.雑誌 「自然言語処理」では,論文投稿,査読管理,出版などが電子的に行われて います.今後,電子ジャーナルも課題になると思います.編集委員会では採 否の最終判定の会議を除いては電子メールを利用しています.ニュースレター は,御承知のように当初は印刷物でしたが,現在は,担当の佐藤理事から電 子メールにより配信されているわけです.学会のホームページは歴代の担当 理事により作られています.理事会も多くの事項を電子メールによって審議 しています.このような本学会の業務は専従の職員によらずに行われており, また,経費をかけないようにするということから,業務の電子化は重要です. これまで,学会を支える活動は関係者の奉仕によって来ましたが,業務を見 直し,コストも勘案して,可能な部分は外部に委託しつつあります.電子化 についてもこのような考えで行っていきたいと思います.

以上,社会化,国際化,電子化という視点で本学会についてみてみました. 本学会は,論文の出版,年次大会といった,学会としての本質的な活動に焦 点を絞って進んで来ました.これは研究者が交流する学会として健全なこと と思います.今後もこの基本をおさえながら,本学会の会員の皆様の研究活 動が実り豊かになるような学会運営を心がけたいと思いますので,会員の皆 様の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます.


会長退任挨拶

会長退任にあたって
辻井潤一(東京大学)

2年前に飯田前会長のあとを引き継ぐ形で会長となり,やりたかったこと,あ るいは,やるべきであったことを残して,島津明・新会長にバトンタッチする ことになりました.ただ,それでも大過なく会長の重責を果たせたのは,会員 各位の支援,そしてなによりも,会員各位の活発な学会活動の故と感謝してい ます.

実際,本学会は,他の情報処理や言語学関連の学会に比べ比較的小規模な学会 ですが,論文誌の量と質,全国大会の参加者数などからみた学会活動は,極め て高い水準を維持しています.流行で作られた学会が数年間の活発な活動の後, 徐々に衰退していく現象,あるいは,大規模ではあるが幽霊会員を多く抱えた 学会に見られる停滞現象など,近年,多くの学会に見られる,いわば,病的な 傾向を考えると,我々の学会は,例外といっても良いかと思います.

また,本学会は,前会長・飯田会長の時代に,学術会議を構成する,いわば, 正規の学会と認められ,科学研究費の評価委員の推薦や学術会議会員選挙にも 参加するようになりました.同様に,私の会長時代には,情報処理学会をはじ めとする4学会とともに,IT戦略会議に対する提言をまとめました.若い会員 の方には,このような学術会議を介しての活動や学会の社会的な活動の重要性 の認識は,あまりないかも知れません.しかし,職能者集団としての学会が, 他の研究分野と伍してその分野の研究を促進し保護していくためには,その学 会が社会的に認知された正規のステータス持ち,社会的な影響力を持つという ことは,極めて重要なことです.

以上のように,我々の学会は,研究活動の実質でも,社会的な認知でも一人前 の大人に成長しています.そういう状態で学会を引き継げたことは,私にとっ て幸いでした.ただ,学会の未来ということを考えると,いくつか,これから 準備しておく必要がある課題があります.課題は,多岐にわたりますが,以下 では,そのうちの2点,国際化と分野の流動性について私見を述べておきたい と思います.

国際化は,ここ10年,手垢のついたキーワードになっていますが,日本の学 会にとってはお飾りのキーワードではなく,真剣に考えるべき問題になってい ます.国際学会や国際的な学術誌の増加,研究の評価の方法など,今後,日本 の研究者が英語で成果を公表することが必然化し,それに伴って日本語論文誌 や日本語での学会活動の比重が著しく低下することは避けられないでしょう. また,ACLをはじめとする国際学会からのアジアへの働きかけも顕著です.こ ういった環境で,言語処理学会という,日本を中心とした学会をどう国際的な 組織とつなげていくかが,ここ数年の学会の最大課題になると思います.

日本の学会を解消してすべてを国際学会へ集約していくのも一つの方向でしょ うが,日本国内での研究の交流と促進,あるいは,日本の研究者のInitiative 確保など,さまざまな理由から,国内学会の解消という方向には,個人的には 同意しかねます.上で,日本の学会(我々の学会)と国際的な組織との連携が 課題というのは,そういう前提での話です.

既に別の機会にもニューズレターに書きましたが,この問題に対する私の解決 策は,アジア諸国の国内学会の連合体を作り,国内学会の自律性を保ちながら, 多国間の研究交流を進めていくこと,その中で,日本の研究コミュニティが全 体として相応のInitiativeを確保していくこと,です.この方向の努力は,ア ジア言語処理学会連合(Asian Federation of Natural Language Processing Associations - AFNLP)という形で実現しつつあります.我々の学会も,AFNLP の中に入ることが理事会で承認されました.AFNLPが具体的にどのような組織 になるかは,これからのアジアの研究者,特に,質の面でも量の面でもアジア で卓越した位置をしめる日本の研究者の熱意と努力に掛かっています.今後, 我々の学会が主体的にこのAFNLPを引っ張っていくこと,それを通して日本の 研究者がより大域的な研究活動を展開し,世界の研究の流れを自分達の研究興 味にそって形作って行けるようになることを期待しています.

もう一つの課題は,研究の流動性です.言語処理学会が創立した当初から,言 語処理の情報処理全般における重要性はますます大きくなってきています.そ のこと自体は,我々の学会にとって良いことですが,同時に,言語処理の中で 閉じた研究から,情報検索,マルティメディアの中での言語とその処理,デー タベースとテキストベースなど,情報処理のほかの分野と連携した研究が急速 に増えています.あるいは,認知科学,認知言語学,社会言語学など,言語学 や心理学の多様な分野との関連も深くなっています.言語と計算にかかわる研 究を見る限り,80年代までの統合の時代から,90年代の個別化の時代を経 て,再び,境界分野の統合が起ころうしているように感じます.

言語処理学会という,分野を特化した我々の学会は,90年代の個別化の傾向 とうまく合致し,他の学会には見られない研究評価手法の洗練とそれに伴う研 究の高度化を達成しました.ただ,個別分野での研究成果は,統合の時代には, その文脈で再解釈されなければなりません.学会を一つの学会として成立させ ている由縁である研究に対する態度(すなわち,評価の基準軸)を,新しい時 代に向けて,緩める,変化させる,再構築する,という態度が必要になってき ていると思います.

新しい分野を他の分野と連携して構築していくためには,評価の軸を多様化す るということですが,組織的にみると,Coherentな学会を作る基盤を見直すこ と,もっと具体的には,他の学会組織の一部との連携を考えていくことが必要 になろうかと思います.すなわち,分野を特化した学会の利点を保ちながら, 他の学会とどう連携し,新たな分野の展開を準備していくか,これも組織とし てここ数年で考えなければならない課題かと思っています.

退任の挨拶に,今後の難題を述べるという,すこし変な形になりました.ただ, この2つの難題ともに,創生期から発展期に入った学会が抱える課題,学会を どう発展させていくかという,むしろ,積極的な課題です.島津新会長と新執 行部,会員各位の熱意が,この2つの方向での学会の発展を達成されることを 期待して,退任の挨拶とします.本当に2年間,ありがとうございました.


ACL2003(札幌開催)の準備状況について

The Association for Computational Linguistics (ACL)の主催する国際会議 である 41st of Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics (ACL2003)が,2003年7月7日より12日まで札幌で開催されます. ACL2003の準備状況についてご報告します.

2002年7月7日より12日まで,米国ペンシルバニア大学で開催されたACL2002に おいて会議が持たれ,各Chairの候補などが決定されました.各Chairについて は,現在最終的な了承をいただいている段階です.また,ACL2002ではACL2003 のパンフレットを全員に配布しました.今後,Program chair や Call for paper などを入れた最終版のパンフレット,ポスターを作成し,8月下旬の COLING2002など関係する会議で配布する予定です.関係する機関に郵送あるい はホームページからのダウンロードという方法で広く配布する予定でおります ので,今後会員の皆様にポスター,パンフレットの配布をお願いすることがあ るかもしれませんが,その際にはどうぞよろしくお願いします.

来年のACL主催の国際会議の開催状況を考えますと,ヨーロッパでEACL,北米 でNAACL/HLTが開催されるため,1年の間に3つの会議が世界3地域で開催さ れることになります.EACL,NAACLはローカルな会議であり,ACL2003はグロー バルな会議なのですが,ヨーロッパ,北米の参加者がそちらの方へ流れる可能 性があります.そうなるとACL2003がアジア中心の会議に変質してしまう可能 性があります.そのようなことの無いように,上記のような宣伝活動を広く行 なっています.また,Workshopの開催についても同様に主としてEACL,NAACL の方で行なわれる可能性がありますので,こちらの方もACL2003で開催してい ただけるように関係者の皆様にお願いしている状況ですが,本学会会員の皆様 からも積極的なWorkshopの提案をお願い致します.

また,ACL2002では地元の大学院生を中心に150名もの学生の参加がありました. これは米国におけるNLPコミュニティーの広さを物語っています.ACL2003にお いても,本学会学生会員の皆さんを中心に同程度の参加を目指しています.こ のようなハイレベルの国際会議に国内で参加できる機会は非常に少ないと思い ますので,学生の皆さんの積極的な参加をお願いします.Student sessionも ありますので,そちらの方への投稿もお願いします.また,ACL2002でも行な われましたが,ACL2003でもデモセッションを設ける予定です.論文投稿の締 切は2003年1月下旬を予定しています.会議の成否は参加者数の多さが一つの 重要な要因となります.多くの本学会会員の皆様の参加をお願いします.

なお,ACL2003に関するWEBサイトは http://www.ec-inc.co.jp/ACL2003/ にあ りますのでこちらもご覧下さい.

荒木健治(ACL2003 Local Organizing Committee委員長・北海道大学)


会議開催案内

□2002 NTT-Stanford Workshop on Concept and Language Process

日本電信電話(株) NTT コミュニケーション科学基礎研究所は,言語と概念 処理技術に関するワークショップを以下の通り開催します.

今回は,スタンフォード大学CSLI(言語情報研究所)との共同研究の成果を中 心として,招待講演も含めた2日間の発表が行われます.また,国立国語研 究所の前川先生,通信総合研究所の井佐原氏他の招待講演を予定しておりま す.ふるってご参加くださいますよう,ご案内いたします.

日時:2002年9月10日(火) 13:00-17:30(受付開始 12:30)
9月11日(水) 10:00-16:50
会場: NTT京阪奈ビル 3F 大会議室
(所在地,交通は,下記のページをご覧下さい)
http://www.kecl.ntt.co.jp/visitor/keihan.html
発表言語:英語
主催: 日本電信電話株式会社
参加: 無料(参加希望者は,ワークショップ事務局までお申込み下さい.〆切: 9月2日)

プログラム,申込み方法の詳細は,下記のURLをご覧下さい.

http://www.kecl.ntt.co.jp/events/nlws/index.html

問合せ先: 2002 NTT-Stanford Workshop 事務局 京都府相楽郡精華町光台 2-4 NTT コミュニケーション科学基礎研究所 日本電信電話株式会社 email:nlws@cslab.kecl.ntt.co.jp, fax: 0774-93-5345


ホームページ(アドレス)の変更のお知らせ

言語処理学会のホームページの運用が通信総合研究所から九州工業大学に移り ました.

これに伴い,ホームページのアドレスが以下のように変更されました.

 旧:http://www.crl.go.jp/nlp/
 新:http://www.pluto.ai.kyutech.ac.jp/NLP/


学会に関する問い合わせは「学会センター関西」にお願いします.

学会センター関西:
〒560-0082 豊中市新千里東町1-4-2
千里ライフサイエンスセンタービル14F
学会センター関西 (担当: 山元 理恵)
Tel: 06-6873-2301, Fax: 06-6873-2300
Email: o-socie@bcasj.or.jp

言語処理学会事務局:
〒152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1
東京工業大学 大学院情報理工学研究科
計算工学専攻 田中研究室内
Tel: 03-5734-3046, Fax: 03-5734-2915
http://www.pluto.ai.kyutech.ac.jp/NLP/

ニュースレター担当(佐藤理史)
〒 606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻
Fax: 075-753-5962
Email: sato@i.kyoto-u.ac.jp

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