■ISLE Workshop参加報告
徳永健伸(東京工業大学 大学院情報理工学研究科)
12月2日,3日の2日間にわたってItaliaのPisaでISLE(International Standards for Language Engineering) Workshopが開催された.このワークショップに参加する機会を得たので,その概要について報告する.
ISLEは米国とEUの間で言語工学に関する標準化をおこなおうことを目的とし,2000年から3年間の予定でおこなわれたプロジェクトである.プロジェクトはComputational Lexicon,Natural Interaction and Multimodality,Evaluationの3つのワーキング・グループに分れて活動しており,今回のワークショップは,Computational Lexiconのワーキング・グループが主催するもので,多言語のレキシコンが主なトピックである.今年がプロジェクトの最終年にあたり,このワークショップはプロジェクトの総括の意味も持っている.
ワークショップには18カ国から56名の参加があった.その内訳は欧州44名(内イタリア18名),米国5名,アジア6名,その他1名である.アジアからは日本2名,台湾,インド,韓国,タイから各1名が参加した.
今回のワークショップは最終報告書に向けて,プロジェクト参加者の進捗状況の報告と意見交換という本来の目的に加え,次期のプロジェクトへ向けて,現プロジェクト参加者以外の研究者も多く招かれていた.特に真の意味での国際標準を意識してか,アジアからの参加を積極的に呼びかけていた.今回,我々がワークショップに参加した目的もISLEの枠組をアジアの言語にどれだけ適用できるかを評価し,それを報告するためであった.
アジアでも前会長の辻井先生の呼びかけでAFNLP(Asia Federation of Natural Language Processing)の活動が活発になっており,今回の発表をおこなうにあたっては,AFNLPの下の言語資源委員会の委員の中からつのったボランティアで作業をおこない報告をまとめた.
ISLEの標準化のベースになっているものは,もともと屈折語の多い欧州の言語のみを考慮して策定されており,実際にその枠組をアジアの言語に適用してみると不都合が多いことがわかった.今回分析の対象とした言語(中国語,日本語,韓国語,タイ語,ヒンドゥー語,台湾語)は類型論的にはヒンドゥー語を除き,膠着語あるいは孤立語に属するが,特にこれらの言語での不整合が目立った.興味深かったのは欧州言語と同じ,印・欧語族に属するといわれているヒンドゥー語もアジア言語的な特徴を合わせ持ち,EAGLESの枠組ではうまく扱えないことがあるということであった.
具体的な提案として,数量詞の範疇を新設すること,現在はResidualの項に分類されている接辞を1級の範疇として採用すること,後置詞範疇の分類をより精密にすること,敬語システムに関する属性を導入することなどを提案した.アジアの言語は新鮮にうつったらしく,手前味噌ではあるが,我々の発表は好評を得たようである.
プログラムは2日間,朝9時半から夕方6時まで発表と議論,その後8時からディナーが用意されており,結局,解放されるのは12時近くという,大変密度の濃いものであった.
ISLEの主催者のグループでは,後継プロジェクトとして言語資源の共有のためのインフラストラクチャを整備することを考えており,そのテーマで2003年のACLのワークショップが開催される予定になっている.
ISLEの情報については以下のURLを参照されたい.今回のワークショップの発表スライドなどもダウンロード可能となっている.
http://lingue.ilc.pi.cnr.it/EAGLES96/isle/ISLE_Home_Page.htm
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