言語処理学会ニュースレター

Vol. 11 No. 3 (2004年8月13日発行)


言語処理学会 会員のみなさま(再掲)

すでにご存知の方も多いと思いますが、言語処理学会が事務を委託していた学会事務センターが、負債により破綻いたしました。今後の対策については追って連絡させていただきますが、とりあえず以下のことをお願い申し上げます。

本年度の会費をまだ納入されていない方は、新規の納入システムが確定するまで、納入を控えていただくようお願いします。

言語処理学会 会長 中川裕志


目次

第10回年次大会 優秀発表賞選考について
10周年記念論文賞(既報)
2003年、第10巻論文賞(既報)
10周年記念論文賞を頂いて
第11回年次大会のお知らせ(予定)


■第10回年次大会 優秀発表賞選考について■

  1. 選考委員の選出

    プログラム委員会で選考委員として各セッション2名ずつを選出した。ポスター以外のセッションでは1名は座長が兼務することとした。選考委員の合計は72名である。担当するセッションでは選考委員と論文の著者の所属は重ならないようにした。また、選考委員が一つの所属に集中しないように各所属ごとに選考委員は最大4人までとした。

  2. 第1回目の投票

    全選考委員には、内規に従って、担当セッションの発表から2件以内を候補と して選び、10点満点で得点を付けて推薦してもらった。集計結果は、推薦件数 全67件であった。

    第1回目の投票結果を提示して以降の選出に関する議論を行なった結果、

    1. 二人の推薦で平均8点以上の論文はそのまま採択。
    2. 少なくとも一人の選考委員から8点以上の評価のあった論文から再投票ないしは議論で決める。

    という方法で選出することになった。

  3. 第2回目の投票

    第2回目の投票方法は、第1回目の投票結果で少なくとも一人の選考委員から8点以上の評価のあった論文24件の中から、各委員が3件以内の論文に投票することとした。

    第2回目の投票結果の上位2件を選考委員会の推薦とすることになり、合計4件を選考委員会の推薦とすることになった。

  4. 選考委員会からは、以下の4件を理事会に推薦した。

    理事会では選考委員会からの推薦を承認し、優秀発表賞の授与を決定した。


    優秀発表賞

    A5-3語彙概念構造による動詞辞書の作成
    竹内孔一(岡山大)
    B2-8日英報道記事からの訳語対応推定における複数の推定尺度の利用
    日野浩平(豊橋技科大)、宇津呂武仁(京大)、中川聖一(豊橋技科大)
    D6-1機械学習による日本語名詞句照応解析の一手法
    飯田龍、乾健太郎、松本裕治(奈良先端大)、関根聡(NY大)
    P1-9日本語の意味タグ体系を定義する試み:Frame Netの視点から
    黒田航、井佐原均(通信総研)

    (第10回年次大会プログラム委員会報告および理事会議事録から要約)


■10周年記念論文賞(既報)■

10周年記念論文賞選定委員長 中川裕志

語処理学会設立10周年を記念し、過去10年間の「自然言語処理」すなわち1巻1 号から10巻5号までに掲載された論文の中から最も優秀な論文を選んで10周年記念論文賞を贈呈することにしました。昨年来、一般投票を行い、その結果に基づいて10周年記念論文賞選定委員会にて厳正に審議した結果、10周年記念論文賞は下記論文に決定しました。

黒橋禎夫、長尾真著
並列構造の検出に基づく長い日本語文の構文解析
(Vol.1, No.1, 1994)

受賞論文の著者には心からお祝い申し上げます。

(2003年総会事業報告から転載)

■2003年年度優秀論文賞(既報)■

編集委員会

2003年に出版された自然言語処理10巻1号から5号に掲載された論文から以下の手続きで論文賞推薦論文を選定しました。

  1. 編集委員および特集号編集委員に優秀論文賞の第1次選定を依頼し、上記各号に掲載された論文のうち、査読点数が5点満点で4点以上の論文を一つの論文あたり2名の編集委員が読み、10点満点で採点しました。
  2. 2004/1/16の編集委員会で、第1次選考の結果として高得点を得た上位2本の論文論文を第2次候補論文としました。第2次選考として編集委員の全員が一人1票で投票した結果、第1位の得票を得た下記の論文を選定しました。
  3. 優秀論文賞推薦論文は以下の論文です。
    増市博、大熊智子著
    Lexical Functional Grammarに基づく実用的な日本語解析システムの構築
    (Vol.10, No.2)
(2003年総会事業報告から転載)

■10周年記念論文賞を頂いて■

黒橋禎夫(東京大学大学院情報理工学系研究科)

長尾真先生との共著論文「並列構造の検出に基づく長い日本語文の構造解析」(Vol.1.No.1,1994)に対して、学会から10周年記念論文賞を頂きました。大変に名誉なことであり、これを励みとしてさらなる精進を続けたいと思います。

この仕事は博士論文「大域的手法による日本語文の高精度な解析に関する研究」の一部として、実際には1992年頃に行いました。当時、構文解析のモデルは多く提案されていましたが、実際の文を解析しようとすると曖昧性が爆発し、途中で解析が止まってしまうことも少なくないという状況でした。我々は、実際の文に多く含まれる並列構造の扱いの不十分さがその原因であると考え、まず、句や節の類似性に着目して並列構造を高精度に検出する論文を発表しました。次に、並列構造の解析結果を用いて日本語文の構文解析を行う方法を示したものが今回賞を頂いた論文です。論文のタイトルが「長い日本語文の解析」となっていますが、それは当時モデル的に扱われていたサンプル文に比べて長いという意味で、実際には我々が日常的に目にする「普通の文」の解析を扱ったものです。逆に言えば、このような方法によってはじめて普通の文の構文解析が可能になったということができます。さらに、用例に基づく格解析の方法の提案を加えて博士論文をまとめ、また、これらをソフトウェアとして整備し、KNP(Kurohashi-Nagao Parser)と名付けて公開しました。

その後、KNP(およびJUMAN)の自動解析結果を人手でチェック・修正することによって、自動解析システムを改善していくとともに、正しい形態素・構文情報を付与したコーパスを作成し、京大コーパスとして公開しました。JUMAN、KNP、京大コーパスは、海外を含め多くの研究機関等で利用して頂くことができ、現在でも様々な問い合わせ、フィードバックを頂いています。

さて、この10年間で計算機環境、ネットワーク環境、そして何よりも言語資源環境が劇的に進歩し、いよいよ言語情報処理の重要な課題である意味、理解などの問題に本格的に挑戦できる準備が整ったのではないかと思います。このようなタイミングでこの研究分野に関われることを幸せに感じますし、またこの分野のさらなる発展に少しでも貢献できればと思います。

最後に、このような魅力的な分野に導いて下さった長尾真先生、また非常に知的でまた刺激的でもあった、辻井潤一先生、故中村順一先生、佐藤理史先生、松本裕治先生、中村裕一先生、野田五十樹氏、伝康晴氏、宇津呂武仁氏をはじめとする長尾研究室の方々に、あらためて感謝したいと思います。


■第11回年次大会のお知らせ(予定)■

開催地:香川大学工学部 ( http://www.eng.kagawa-u.ac.jp/
日程: チュートリアル:2005年3月14日
本会議:2005年3月15〜17日
ワークショップ (2件):2005年3月18日
実行委員長:青江順一先生(徳島大学)
プログラム委員長:荒木健治先生(北海道大学)

(詳細は、次号ニューズレターでお知らせします。)


おわりに

10周年記念論文賞、2003年論文賞については、先の総会で表彰が行われております。今号の内容は、既に報告済みのものもあったのですが、論文賞等の特集としてニューズレターとしてまとめました。また、黒橋先生には特にお願いして、受賞者の立場で、あるいはちょっと客観的にコメンテータの立場と言うことで寄稿して頂きました。(田村)


(財) 日本学会事務センター破産の件に関しましては、当言語処理学会についても被害が予想され、理事会でも急遽対応が検討されております。状況については、別の機会にお伝え致します。

ニュースレター担当(田村直良)
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横浜国立大学大学院環境情報研究院社会環境と情報部門
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Email: tam@ynu.ac.jp

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